「サナギネ・成体サイド」

  • 青山円形劇場 Aブロック11番
  • 原作 小池竹見 上演台本・演出 福原充則

双数姉妹で上演されていた過去の傑作を「ベッド&メイキングス」で再び!という企画。クラウドファウンディング企画を実施されていたので、失われる青山円形への餞もこめて参加してみました(あと、南の島に雪が降るのDVDにつられた)。青山円形を真っ二つに区切って、成体サイドと幼生サイド、ふたつの芝居が同時進行する。

成体サイドを選択したのはまったくもって単に「その時間しか空いてない」という即物的な理由だったのですが、観終わって、他の感想なんかもぽつぽつ探して読んだりしているうちにひとつ思ったのは、どこかに「自分の知らない」ことが残される、想像する余韻をもたせる芝居だなあってことです。私のように片方しか見ない観客はもちろん、見られなかった片方に思いを馳せますし、両サイドを見た観客であっても、幼生→成体の順で見たら、逆順ではどのように世界が見えたのかを考える、逆もまた然り、というように。

それはなによりもこのどこか無謀とも言えるアイディアから生まれたことで、無謀だろうが乱暴だろうが、面白そうだからやる、というようなところこそ、私を芝居の世界に引きずり込んだ大きな要因の1つだったよなーなんてことを思ったりしました。

ある安アパートの一室が、「むこう」の世界からの訪問者によって扉や箪笥が取り払われ、壁があるけどない、ないけどある、という芝居のお約束を翻弄しながらついに「カーテン開けます!」の声と共に世界が交じっていく瞬間は、まさに劇的なカタルシスそのもので、そうそうそう!これこれこれ!と見ながら嬉しくなってしまいましたよ。

男を手玉にとっては金をだましとり逃走するヨシノが、自分の元いた場所に帰って、「ここにくれば誰かが私を待っていてくれる、とでも思っていたんだろうか、あたしは」とひとりごちるところ、走れメロスよろしく、約束を果たすために走るキンコが出会ったタクシー運転手が言う「おとなになったらあまりにも自由すぎて、どこへ向かったらいいのかわからない。座標軸がないの」といい、この部屋で私を待っていてくれないかというところ、14歳のヨシノと24歳のヨシノに、いつだって現在進行形がいちばん強い、私からみたらあなたたち、殆ど変わらないのよ、つまらない、と老成したヨシノが言い放つところが特にすきでした。