「新しい祝日」イキウメ

いやーきつい芝居だった!ところどころ心理的にものすごくグサグサくる場面があり、しかも最後までそんなわかりやすい解放的な展開があるわけでもないので、かなりハートが鍛えられた観劇になりましたね…。芝居がダメってわけではなくて(むしろダメだったらこんなにキツくなかったと思われ)、キツイ方向によくできているっつーか。

オフィスでひとり残業する男の前にひとりの道化めいた男が現れる。道化は男に自分のことを忘れたのかと問う。「おまえにはまだここが会社に見えてるのか」。そして男は全てであり、1人でもある「汎一」となって、世界を最初から辿り始める。

なにがきつかったかって、まずバスケの場面ね。ルールさえわかれば誰よりもうまくできる、でも「うまくできる」ことがここでは求められていないとわかる、あの感じ…!やめて!ひとのトラウマ叩き起こさないで!しかも、ここが相当しつこく繰り返される。もちろん繰り返されることに意味があるんだけど、ほんと「ライフはゼロよ」ってこういうときに使うのかと…

この「しつこさ」はこのあとも続いていくわけだけど、中でも「部活」の場面だよね。岩本さん大好きなんだけど、岩本さんの「しっかりアップしていこー!」が後半もう憎らしくすらあった。なんのためのアップ、なんのためのストレッチ、それがわからないままに、全体の中のひとりとして周囲を乱さないことだけが目的になっていく。

序盤に道化が汎一に「ここどこだって、思っちまったんだろ?」と聞くんだけど、それに頷かざるを得ないというか、会社でさ、すごいストレス抱えてとか、残業に追われてるとか、そういうことと無関係に、「会社」って世界がゲシュタルト崩壊する瞬間ってあるんだよなあ。ただの紙に、何を書いてるんだわたしは、って我に返る瞬間というか。ああいうとき、私はダメになりかけてるのか、それとも、まっとうになりかけているのか、どっちなんだろう。

浜田さんと安井さんは鉄壁のコンビ感を出しつつあるなあ。組んでよし相対してよし。どうでもいいことだけど、浜田さんは実際にバスケをやっていたひとのフォームだったね!大窪さんの「敵意」がつねにひたひたと湛えるような敵意を滲ませていてすごかった。そしてこわかった!

年明け2月には「カタルシツ」再演だそうです。初演見逃したので今度はぜひ見たい!