「追憶のアリラン」劇団チョコレートケーキ

劇団チョコレートケーキ、「親愛なる我が総統」に続いて2回目。パラドックス定数といい、最近フィクションとノンフィクションの境界線を描いてるあたらしい劇団に惹かれる傾向にあるなあ。いや、もちろん大いなる虚構も大好物ですけどね。

戦時下の平壌総督府下の検事局に勤務した日本人、彼の秘書、総督府を牛耳る軍、彼らに抵抗する独立運動の兵士らを描いていて、もちろんフィクションではあるのですが、しかしこんな物語が「あったかもしれない」と思わせる。見ている途中で、何がというわけではないのに突然胸を衝かれたようにくるしくなってしまったのは、これが決してhappily ever afterというようなエンディングに向かっているわけではないことを知っているからかもしれない。

豊川と朴忠男のような、人間と人間の交流という、ただそれだけのことを貫くことがどれほど困難だったかを思い知らされますし、それが今なお口で言うほど簡単ではない側面があることにも思いを馳せずにはいられませんでした。

とはいえ、この10年というスパンだけで見ても、物事は少しずつ、しかし確実に変わっていっているとおもうし、それを「文化」というものが後押ししていることも、わたしにはずいぶん心強いことのように思えます。

「親愛なる我が総統」のときもそうでしたが、それぞれ独軍と日本軍から解放されたあとのポーランドや朝鮮における「ソビエト連邦」というものの存在の大きさをひしひしと感じますね。解放者が今度は為政者として力を持つという。

佐藤誓さんの豊川、温厚だが頑とした信念に貫かれた佇まいでとてもよかったです。その豊川に激しい敵意を燃やす取調官の李をやった西尾さん、反対に豊川と深く信頼し合う朴事務官をやった浅井さん、いずれも前回拝見したときとはまた違った雰囲気でよかったなー。人民裁判委員をやっていたのがキャラメルの大内さんだったんだけど、最初あんまり渋い良い声で喋っているから大内さんだってわかんなかったヨ!

次回、近藤芳正率いるバンダ・ラ・コンチャンとチョコレートケーキがタッグを組むということで、これはかなり楽しみです!