原題「The Martian」。原作が「火星の人」。この映画の撮影してるよっていうセバスチャン・スタンのファンの方のツイート見て知って、原作すごい評判なんだってーということで先に原作を読んだんですがこれがんもーめっちゃ面白かった!ので日本公開を今や遅しと待っておりました。
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原作の素晴らしさは多分誰もが言うように、主人公マーク・ワトニーが決して希望と、なによりもユーモアを忘れないところにあり、ディスコミュージックに対する彼のおディスり発言の数々は何度読んでも楽しいし、まさに「知力」を尽くして天命を待つ、いや天命を待ったりしない、天命を引き寄せるそのタフネスさにあると思いますが、映画化にあたってその肝の部分をちゃんと写し取ってくれたことがすごくよかったなーと。いやでもさ、本当にここのところ「ビッグバジェットであればあるほどどんな話にでもむりくりラブロマンス突っ込む」みたいな風潮がほんとになりを潜めていて私はうれしい。ワトニーは火星でいかに生き延びるかを科学を元に現実的に考え、地球ではしぬほど頭のいい人たちがワトニーの帰還を実現させるためにその知力を総結集させる。だれもしょうもないことを言うバカはいないし、感情に先走ってみんなのジャマをするバカもいない。それでも次々と立ちふさがってくる壁、壁、壁!
原作を先に読んでいると、あまりのスピード感に「原作のエピソードを確認してる」風になっちゃったところもあるので、これからご覧になる方には先に映画を見なよ!とおすすめしたい。そこからでも原作、じゅうぶん楽しめます。とはいえ、文字だけではぼんやりとした想像だったパスファインダーでのやりとりや、打ち上げのためのMAVの軽量化の場面、実際に見ると「こんなに捨てるんかいー!」感がハンパないとか、音楽との絶妙なマッチング(ボウイの曲が使われているとは聞いてて、Life On Marsかな?と思っていたらStarmanでしたね)、あの茫漠たる火星の風景なんかは映画ならではの体験でとても印象的です。
映画の中ではハブの爆発が一番の危機として描かれてると思うんだけど、あそこでワトニーの書く手紙が、この作品のなかで唯一(と言っていい)「現実」ではなく、理想とか、大義を口にしていて、現実の困難さに打ちのめされたあとに人間が大義に向かうというのはなかなか面白いところだなと思いました。
最後に打ち上げられたワトニーを「捕まえる」のは原作ではベックですけど、そこはさすがにジェシカ・チャステインになってて、残念ではあるんですが(ベックをやってるのがセバスタだからね!)ま、ま、妥当な判断ですよね。あそこでワトニーのキメの台詞を言うためにも、あそこに船長がいてもらわなきゃ的なとこもありますし。
地球側の仕事師軍団で一番印象深いのはキウェテル・イジョフォーが演じていたカプーアなんですけど(パスファインダーの意図を読むとこ最高ですよね)、アレス3のフライトディレクターをやってるのがショーン・ビーンなんですよね。でもって、あの「エルロンドの秘密会議」でしょ!?原作でもこの会議名出てくるんですけど、あのシーンでの「じゃあ俺の役回りはグロールフィンデルにしてくれ」「みんなオタクばっかり!」っていうあそこ、んもー顔のニヤケがとまらなくてやばかった。LotRの映画ではグロールフィンデル出てこないの知ってて言ってるに決まってるしその会議に出てた人そこにいますからああ!って全指輪ファンが思ったことであろう。私は思った!思ったヨ!
ヘルメス号のクルーではベックの無駄な彼氏力の高さぶりもいいけど、マルチネスをやったマイケル・ペーニャ!最高じゃないですか。「アントマン」でもすごおくよかったもんなー。あのワトニーと通信するシーンのすばらしさよ…!
2時間20分と割と長尺ではあるんですが、原作を読んでいたというのを抜きにしてもすごいスピード感でどんどん話が進んでいくし、ひとりの男を地球に帰還させる、その一点にすべての登場人物の持てる力が結集されていくのは文句ない快感で、気分良く映画館をあとにできること請け合いです!