「クリード チャンプを継ぐ男」


かの「ロッキー」の続編というか、スピンオフというか、全米公開されて上々の評判と興収であるのを見ても「そうかあ」ぐらいにしか思っていませんでした。何を隠そう、わたしはいわゆる格闘技全般に興味がない、興味がないだけならまだしもちょっと敬遠してすらいる、そりゃ「ロッキー」ぐらいはテレビでやってるの見たことあるし、有名なシーンはそれこそ今まで数多のパロディでやられているわけで、予備知識は一応あるとはいえ、しかしボクシングかあ、というテンションでしか見てなかったです。

とはいえ、見た人見た人、こうも絶賛が続くとやっぱり心が揺れますし、私のモットーとして「たくさんの人がいいというものには必ずそれだけの理由がある」というのがあるので、もうすぐ上映終わってしまう!というタイミングで足を運んできた次第。

先に言っておきます。
むっちゃくちゃよかった。むっちゃくちゃよかったです!!!お近くの映画館でまだやっているのならぜひ足を運んで欲しい!!やっぱりたくさんの人がいいというものには必ずそれだけの理由があるのだなと改めて思う!

トーリーとしては特にヒネリもない、素直なものだと思います。「ロッキー」シリーズは、そりゃ見ておいたほうがいいけど、でも私のように「むかーし日曜洋画劇場でなんか、やってたよね」的な知識だけでもぜんぜん問題ない。ロッキー・バルボアのライバルにして親友、アポロ・クリードの遺した息子アドニス。かれは自分の中に流れる血に逆らうことができず、ボクサーへの道を歩もうとする。そしてアドニスはロッキー・バルボアのもとを訪れる…という筋書き。

個人的に新しいというか、うまいなと思ったのは、アドニスはいわゆる私生児なんですけど、アポロの妻がかれを引き取り、愛情をかけて大事に育て、教育を受けさせ、かれは素直にその愛情を受け取った大人になるという出発点。ファーストシーンでは施設にいるとはいえ、引き取られてからはアドニスは非常に裕福な、恵まれた環境で育っていることがわかりますし、俺を捨てた父や母…!みたいなわかりやすいハングリーさを前面に押し出していない。ドラッグで荒れたりもしていない。けれど、彼の中にはどこかうめがたい、欠落した部分がある。そのことは充分にスクリーンから伝わってくる。

ロッキーとアドニスの、その擬似親子関係ともいうべき感情のやりとりがいちいちすばらしく、だからこそロッキーに「家族じゃない」と言われてしまって荒れてしまうアドニスの気持ちが痛い。もし願いが叶うんなら妻ともう一日だけ過ごしたいというロッキーも切ないし、留置場に迎えにきたロッキーとアドニスのシーンも切ない。もうここらあたりからどんどん胸がぎゅんぎゅんしてきてやばい。

かつての伝説のチャンピオン、アポロ・クリードの息子であるという事実がリークされてマッチメイクされた現チャンピオンとの試合。かませ犬、「クリード」という名前に価値がある、その名前でなければ試合は組まない、とまで言われてしまう。だがもちろん、アドニスとロッキーはこの試合を受けて立つ。

試合の結果がどうなる、とかそんなことよりも、この試合に何かを「賭けた」人間たちのドラマがリングのうえに渦巻いていて、ほんと祈りのポーズで見守ってしまったし、リングに沈んだアドニスの脳裏に父親が一瞬浮かぶシーンで号泣したし、あのラグビーW杯で南ア戦のときに映し出された女性のように、「カモーーーン!!!」って叫びたくなったし、しかも、しかも、あそこで、あれだよ。これ、アメリカで上映したとき、大丈夫だったの?あそこでみんな、席立っちゃったんじゃないの?うおおおおおおおって映画館中が雄叫びあげたんじゃないの?ほんと、あの一瞬を体感するためだけでも、チケット代の価値ある、マジで!!!

これは、スタローンにオスカーあげたくなるのもわかるし、いやもう獲って欲しいって私も思ってるし、芝居の上手い下手じゃなくて、この映画でロッキー・バルボアを演じられるのは、そしてその一挙手一投足に説得力を与えられるのは、シルベスター・スタローンというひとの人生そのものでもあるんじゃないだろうか。文句なし、すばらしい映画でした!!