「マネー・ショート」


ミクロもマクロも経済とついた途端に沈黙する典型的な「けいざいよくわかってません」人間ですので、先に見た方の「サブプライムローン問題予習してから見に行くが吉」とのアドバイスを読み、「猫でもわかるサブプライムローン」的な簡単解説をざっと読んで見に行きましたが、おかげで楽しめました!いや、読んでいかなくても楽しめたなとは見終わって思いましたけど(話の内容がわかっていなくてもああいう侃々諤々の台詞の応酬見るの大好き)、でも予備知識あったほうが飲み込みやすさはあったと思う!

クリスチャン・ベール演じるマイケル・バーリはその鬼の分析力で、巷を賑わすサブプライムローンの「利回りのいい商品」の顔の裏を見抜くわけですが、あらゆる大手銀行がサブプライムローン債務不履行を起こしたときの保険というアイデアを聞くやいなや失笑紛いで迎え入れるという展開は、観客がこのあと何が起こるかわかっているだけに、いやいやあんたら何をそんなのんきな…と思わざるを得ない。そうなると、その一発逆転、つまりデフォルトが起こるのはいつなのか、というそのXDAYをどこかで心待ちにしてしまう。

しかし、実地調査に出向いたバウムの部下たちが目撃したように、そして劇中でベン・リカートが予言したように、そのXDAYが来た時には小さな子どもを持った家族は家を失い、大勢の人間が路頭に迷い、あるいは死ぬ。崩壊寸前のサブプライムローンのこちら側とむこう側で、真実を見抜き、その真実が悲惨な現実を産み出すことを知りながらそれでもその真実に「カネ」を媒介に何かを賭ける男たち。この複雑な心情を堪能できる脚本がほんとによかった。個人的には、スティーブ・カレルの演じたマーク・バウムの文字通り複雑な胸中、金に対する嗅覚が人一倍あり、だがその金を憎む自分がどこかにいる、というあのキャラクターには惹かれるものがありました。お兄さんのエピソードのね、あの、死にたい、と相談してきた兄におれは金をわたしたんだ…っていうあの絶望。それでも目の前のカラクリを見抜き、どちらに金が入るのかを見分ける嗅覚は衰えない、その絶望と興奮が綯い交ぜになるキャラクターを見事に体現してたよなあと。フォックスキャッチャーの時と同じ人と思えない、すごい役者さんだよなー!

「けいざいよくわかってません」な私みたいな人間のために、いわゆる「第三の壁」を越えてこっちに用語説明してくれちゃう演出も気が利いてて好きだったなー。ブラッド・ピットは変人の凄腕トレーダーって役どころなんだけど、それにしたってかっこよさあまりある。登場人物の中で、金融の世界に足を突っ込んだばかり!な学生あがりの2人の視点が入るのも面白かったですし(彼らは登場人物の中ではっきりとまだ「痛み」を知らないように描かれており、その無邪気さも他とよい対比だった)、金融わかるマンならもっと色々な視点があるんだと思うんですけど、わかんないマンでもちゃんと楽しめる映画だったなって思います!