「錦秋特別公演2016」

  • ロームシアター京都メインホール 6列25番

ご兄弟秋の恒例行事。お邪魔するの久しぶりかもしれません。せっかく京都に住んでて京都に来てくださるのだから〜ということで出かけてまいりました。

この錦秋公演も回を重ねてきて、ご兄弟もいろいろと見せ方を模索されているようなんですが、今年からの試みとしてまず最初に「歌舞伎塾」と称し、役者の楽屋入りから拵え、さらにそのあとの演目までつるっと見せながら、折々にご兄弟やお弟子さん方が解説を加えてくださっていくという。これ、よかったですよね〜!いつもは、芸談というコーナーでご兄弟に今後のこととか今年の芝居について聞いたりするんだけど、錦秋公演てお値段設定もあってほんとに「初めて歌舞伎見る」みたいな方がけっこういらっしゃる印象があるんですよ。なので隈取や衣装の話はもちろん、太鼓や三味線をこんな風に使うんですよっていう実践に即した解説はほんとにニーズに合ってると思いました。別に歌舞伎初めて!って方じゃなくてもいてうさんと鶴松さんの拵えが出来上がっていくのを見ているだけでも結構楽しい。これはほんといい試みだなあと思いました。小三郎さんや國久さんの顔と名前を覚える方も絶対多いと思うし、過程を見た後で「草摺引」を見るとぐっとのめりこんで見られるし、今後もこの試み続けていってほしいです。

途中の効果音のクイズ(この音はなんの自然現象を表しているでしょう?っていう)で、勘九郎さんが「いつもは歌舞伎初めてって方に答えていただくんですけど、京都はそういう方も少ないですかねー」って言って、でも初めてだってひとが前方でもちらほら挙手されたんですよ。勘九郎さん「今手を挙げるってことはあてられるってことなのに、勇気がある!」そしたら客席にマイク持って降りてた七之助さんがやおら「そうですね、今手を挙げた人はすごく勇気があるか、頭が悪いかどっちかです」勘九郎さん「あ、あたまが、わ、おまえなんてことを」七之助さん動ぜず「勇気があるか頭が悪いかなんですけど、この人(前方に座っていた男性)は間違いなく後者です!」ちょちょっちょ七之助さんどうしたー!と一瞬めちゃ焦りましたが、続けて「なぜならこいつはぼくの中学のときの同級生だからです、横浜で寿司屋をやってるんですけどね、歌舞伎とか全然知らない、寿司を握ることしか考えてないから絶対知らないと思います!」ってめっちゃキラキラした目で仰ってました。さすが中村屋のお子だよ…やっぱりこういう血が流れているのだね…。あと幽霊の効果音のときにつつつ、と鶴松くんの背後に近寄った勘九郎さんが、その日鶴松くんが来てた上着をぽいっと客席に投げたんだけど、七之助さんも止めもいさめもせず、「大丈夫まだトランクにたくさん入ってるじゃない」とか言っていたのでほんと似た者兄弟だなと思いました。

恒例のご兄弟への質問コーナーもあって、その中で、勘九郎さんが文京かどこかの公演の時に、七之助さんは今後やりたいお役で「揚巻」とおっしゃったけど、勘九郎さんは助六はやらない、とお答えになったことが七之助さんファンのなかで話題になっている、理由をよかったら教えてください、と聞いた人がいたんですよね。勘九郎さんとしては、まず気軽にやりたいとかいうような役ではない、市川家が大事にされているものだから、というのを第一にあげつつ、基本自分は助六のニンではないとお考えになっているようでした。うーんこれ、ツイッターでもちょっとそのやりとりを書いたんですけど、勘九郎さんは決してご自分を卑下してる、遠慮してるというニュアンスまったくなかったので、そうとらえる人もいるんだなーというのが不思議な感じでした。個人的に私も七之助さんの揚巻はちょう見たいけど、助六勘九郎さんでなくてもいいというか、勘九郎さんじゃないほうがいいかなあとか思います(逆にこれもずっと言ってますけど、籠釣瓶は菊之助さんの八ツ橋で見たいなとか思ってるし、できればいろんな組合せで見たいという欲求のほうが強いです)。

歌舞伎塾のあとは汐汲、そして久しぶりに勘九郎さんが女形をやる女伊達。私、勘九郎さんの女形好きなんですよね…って勘九郎さんファンの人はそういう人多い!気がする!タイトルのとおり、きりっとした踊りで、かわいらしさもありつつ、勘九郎さんも楽しく踊ってらっしゃるようで、よかったです。もっといっぱい女形やってくれてもいいのよー!(心の叫び)