「十二月大歌舞伎 第二部」

◆吹雪峠
以前獅童さんと七之助さんと愛之助さんの組み合わせで見たことがあります。なので七之助さんのおえんは2回目かな。助蔵が獅童さんで、当時の感想にも書いたけど、獅童さんのはっちゃけぶりが若干行きすぎていて、この作品の心理劇としての見所が薄味になってしまった感があったので、今回のピリッとした空気はすごくよかったです。とくに七之助さんのおえんがイイ。あの、直吉という存在が自分たちを深く結びつけている、おびえたおまえの顔をみるとたまらなくなる…って、あの時のうっとりした顔、めちゃくちゃエロかった。直吉が飛び出していったあと、あの小屋で二人はどうするか、そこの余韻が残されているのもこの作品の面白いところだと思います。

寺子屋
私が過去に観た座組と比較しても群を抜いて若い座組での寺子屋。これ、第二部の演目はどちらも心理劇の要素があるというか、寺子屋も松王丸を中心に抑えた、こらえた芝居が多くて、かつそれが一瞬解き放たれるところにカタルシスがある気がします。ほんと、主への忠義のために寺入りしたばかりの子の首を落とすことを算段する、って今じゃ到底成立しない筋書きだと思うけれど、我が子を身代りにした松王丸と千代、寺入りした「子も同然」のはずの子の首を落とした源蔵と戸浪も、どうにもならないものに雁字搦めになりながらの選択であるわけで、だからこそこの芝居の最後、いろは送りにたっぷりと時間をかけるのも頷けるなあと。

松王丸はしどころしかない役だといってもいいような感じですが、勘九郎さんの松王はかなり心情が表に出る感じでしたね。もともと、声に感情がよく乗るタイプの役者さんなので(そしてそれがものすごく効果的に発揮される時も多々ある)、松王はもっとぐっと抑えた芝居がいいなあ、と思われる向きもあるかもなーとは思いました。源蔵の松也さんも若さが出た芝居でしたが、これからこの年代の座組で観ていく機会も増えるだろうし、今後に期待という部分でもありますね。あと、今回は寺入りもかかりましたが、七之助さん千代がここでもぐっとよかった。あの小太郎と別れる場面な…!むちゃくちゃよかったです。もうあそこで相当泣けた。