「無休電車」劇団鹿殺し

  • シアターブリーゼ P列23番
  • 作 丸尾丸一郎 演出 菜月チョビ

2013年初演。「電車は血で走る」の5年後を描いています。前作の最後でもう一度夢を、と立ち上がったけど、結局のところ生活に追われ、そして創立メンバーが不慮の事故で亡くなってしまう…

「電車は血で走る」から5年の開きがあるわけですが、物語の構造もよく似ていますし(常ならざるものが物語の主人公の導き手となる)、電車を運命になぞらえる見せ方もほぼ踏襲されているといっていいのですが、しかしこうしてふたつの作品を連続で見ると如実に感じること、それは
う、うまくなっている…!
うまくなってるというか、洗練されているというか、観客にどう見えるかという視点がちゃんとあるというか。何しろ見やすい。無休電車は「銀河鉄道の夜」がひとつの大きなモチーフとなっていますが、単に劇中劇として処理しているように見えたものが、物語の大きな柱となるところなど、ひやーうまいなーとしみじみ感心してしまいます。

劇団で上京してきたときの東久留米での共同生活とか、無休電車もまたエピソードの中にノンフィクションの種が混じっており、中でも作家の「もう書くことがない」という台詞とかよかったなあ。そしてこの世界における運命共同体、電車を劇団に見立てた台詞の数々も印象に残りました。

見せ方もだけど、ギャグも洗練されてたよなー。あと、あの稽古風景はどうしても「半神」と「朝日」のアレを思い出さずにはいられない(でも意識してないわけないと思う!)

作品を較べるというのはほとんど無意味なことというのは重々承知の上なのですが、もし私が芝居をあまり見ない友人にどっちかを勧めるとしたら「無休電車」を勧めます。安心して楽しませてくれるだろうというクオリティがある。でも、たとえば「電車は血で走る」みたいなやつをうっかり見て足をつかまれちゃったら、きっとこの世界から抜け出せないだろうなとも思う。そういう「理屈じゃない」パワーがある。いずれも魅力のある作品で、同じモチーフでありながら、こんな風に手触りを感じさせてくれるというのも面白いですよね。二作品を連続という試みの醍醐味を存分に味わうことができたと思います。