「スーパー歌舞伎II ワンピース」

初演が大評判となり、早くも再演!となったのですが、ご存知の通り猿之助さんの負傷により、もともと「麦わらの挑戦」枠としてルフィをやることになっていた右近さんが本役になるという形で公演を続行しています。ちなみに「挑戦」枠とは設定価格に差があったんですが、ご丁寧にその差額分を払い戻しの対象とするという対応。

私が拝見したのは猿之助さん降板して4日後でしょうか、右近さんもまったく危なげのない堂々としたルフィぶりでしたし、初演のときの記憶も薄れつつあってなんだか新鮮に観られた感じでした。というか、けっこう変わってますよね?そうでもない?

しかし、同じ役でありながら、役者が変わるとこうも変わるか、という部分があるのが演劇の醍醐味だよなーと改めて思いました。今回、はからずもこうした展開になったわけですが、この「ワンピース」の舞台におけるルフィは、確かにめちゃくちゃ強いけど、その強さを如何なく発揮するという場面よりも、なぜだかみんなが「彼を助けたくなってしまう」存在として描かれる場面が多い。それが、猿之助さんのルフィとして見るときと、右近さんのルフィとして見るときでは、台詞の聞こえ方が違ってくるんですよね。もちろん、今回こうした突然の事態になってという事情を観客が踏まえて見ているというのもありましょうが、逆に言うとそういうサブテキストを観客が自由に見ることが許されているというのが演劇の面白さではないかとも思うんです。多分誰もが右近さんの奮闘を見守っているし、それを助けたいと思っているし、そういう心が舞台の上にも空気として伝わっていて、なんともいえない「麦わらの一味」としての存在感を醸し出していたように思われます。

今回、奮発して花横のお席を取りまして、それというのも初演を松竹座で2階席から見たときに、次に見るときは花横にして、あの巳之助さんボン・クレーの引っ込みを観たいものじゃ!と思ったのをうっすら覚えていたからなんですが、いやはや堪能しましたよー!ほんと巳之助さんのあの再現力の高さとそれを裏打ちする身体能力すごすぎる。あの引っ込みの前の立ち回りで指でクイクイッと煽るとこマジで「ごちそうさまでーーーーす!!!」と心の中で叫ぶほどに大御馳走だった…あれを思い出すだけで白飯食えるレベル…。花横だったので二幕のファーファ―タイムでは浅野さんにハイタッチまでしていただき、思い残すことなし!

盛り上がる二幕、ドラマの三幕、という感じの構成だけれど、三幕はやっぱり猿弥さんや右團次さんがぐっと芝居で見せてくれていて、その重量感がすごく効果的でした。でもって、あの最後のシャンクス…これ…絶対猿之助さん千穐楽とか出たがるやつじゃん…と思いましたね。しかも台詞が台詞だから、あそこで猿之助さんがシャンクスやったらまたもサブテキスト大発生でドラマ以上のドラマになりそう(と猿之助さんが思ってそうだよ!くれぐれもご無理なさらず〜て私がここで言ってもしょうがない)。

カーテンコールで、右近さん隼人さん新悟さん巳之助さんが手をつないでぱっと出てきたのがすごくよかった。すごくこの演目にふさわしい光景だったと思います。11月末まで長丁場ですが、どうぞみなさまご安全に!