「ビリー・エリオット」

ロンドン版が劇場公開された時に見に行って、いいだけ涙をしぼったわけですが、その舞台を日本人キャストで!!東京公演をご覧になった方々の熱い賛辞におされて大阪公演にお邪魔してきました。

私が見た回のキャストはビリーが山城力くん、父親が吉田鋼太郎さん、ウィルキンソン先生が島田歌穂さん、おばあちゃんが久野綾希子さん、マイケルが山口れんくんという布陣。ロンドン版では北部の炭鉱の町ということで北部訛りの英語で演じられていますが、日本で炭鉱の町といえば、ということなのか、北九州地方の訛りで演じられているのが面白い。この辺はチャレンジングな試みではあるけど、劇中でのロンドンへの距離感(日本に置き換えれば、東京への距離感)を自然に出すにはいい演出だったんじゃないかと思います。

好きなナンバーがたくさんあるんですが、ロンドン版を見たときもそうだったし今回の公演を見てもそうなんですけど、私はGrandma's Songがどうも、好きすぎますね…!あの歌もだけど、演出も、なんつーか全部が自分のツボに蹴りを入れてくる感じがします。どこか退廃的な雰囲気の男たち、椅子を使った振付け、踊っているときはわたしのマーロン・ブランド、と目を輝かせるおばあちゃんとのダンス…。下手のセットの窓から彼らの残像が消えるその一瞬まで全部が好き!

オールダービリーとの白鳥の湖の美しさも忘れがたいし、マイケルとのExpressing Yourselfも素晴らしかったなー!多幸感とも違う何か、それこそこのあとビリーがElectricityで歌うような、自分の中から何かが解き放たれるような高揚があった。山口れんくんちょうキュート!そして、山城くんビリーのピュアネスな…!私は今回の各キャストのバックボーンのようなものはまったく目にせず今回の公演を拝見しましたが、この日のビリーである山城くんだけでなくおそらくはすべてのキャストが、演じたい、踊りたいという衝動ひとつをもってこの舞台に挑んでいることは想像に難くなく、しかも、この役を演じられるのは人生のほんの瞬きするような短い時間にだけというその切なさ、一瞬の輝きが全編にわたって爆発していて、それだけでも胸がいっぱいになるような感動がありました。

それにしても、本当によくできたミュージカルだ!ビリーの合格が決まった後の、去っていくビリーと見送るマイケル、別れていく家族、その沈みゆく炭鉱の町が切り取られているシーンすべてがすばらしいし、だからこそその哀切を吹き飛ばすカーテンコールがより深く心に刻まれる。楽しかったです!