「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」


「フォースの覚醒」に続くエピソード8!正史スターウォーズサーガ2年ぶりの新作です。前作のJ.J.エイブラムスから監督を引き継いだのはライアン・ジョンソン

前回レイがルークを訪ねていくところでto be continuedとなったわけですが、もうまんまそこからのスタートです。なのでフォースの覚醒(を見ないでこれを見に行こうと思う人がどれだけいるかわかりませんが)は絶対見ておいた方が良いというよりも見てないとなんのことだかぜんぜんわかんないと思います。前回登場した主要キャラクター、レイ、フィン、ポー、そしてBB-8が中心となるのはもちろんですが、今回はルーク・スカイウォーカーがついにその姿を現し、過去の因縁と向かい合うという大きなプロットが中心にあります。やっぱりねえ、そんなに旧作に特別な思い入れがなくとも、ルークというキャラクターはやはり(劇中で本人も言うように)伝説、神話、一種のイコンであって、それをとりまく物語というのはやっぱり惹かれてしまうものがありますよね。

しかし、個々のシーンではすごく好きなところもありましたし、次から次へとのジェットコースターなのでじゅうぶんに楽しめましたが、個人的にはいまいち釈然としない部分が残った…というか、物語がわたしのツボをことごとく外した感があるというか。物語が美しい流れを描いていないように思えた部分があり、かつ、それにしては尺が長い、というのが気になったところ。

まず、基地からの脱出を試みたレジスタンスが、冒頭で武器の大半を失う描き方からはじまり、ファースト・オーダーの追跡を振り払うための極秘作戦を立て(ポーは自らが指揮権をとることを期待したような素振りがあり、レイアの代役となるホルド中将への不信感が描かれる)、その作戦が潰え、とはいえホルドにはちゃんと目論見があり…とレイを除くキャラクターたちの流れが描かれるんですけど、そのどれもがうまく繋がっていないというか、どうにもマッチポンプ感が否めない。個人的に、こうした大局において「内輪もめでピンチを招いて火消しに特攻精神を見せる」みたいなのに全く燃えられないタイプなので、うん、中将とポーはちゃんとお互いのビジョンを話し合えよ…って思うし(めちゃくちゃベタだが、内通者がいることを疑って機能不全になるほうがまだしも飲み込みやすい)、その中将の目論見をぶっ潰して対抗手段もなく味方がただ撃たれるの見るしかないって相当な絶望的状況を生んだのが「極秘作戦」の失敗からきていて、その「極秘作戦」の失敗ももう少しなんか…書きようがあったのでは!?コード破りが裏切るのがダメだとかではなく、むしろそういうのドンとこいだけど、この宝石のようなキャラクター(ベニチオ・デル・トロなにしろどちゃんこカッコいい)をこんな書きぶり!?という気がしてしまう。

そしてそのすったもんだのあとクレイトでの最終決戦になり、しかしそこまでで相当の尺を使っているので、観客の集中力がいちばんいいところで切れがちになるっていうのもあまりよくない。長いからダメだというわけではないけど、長いならそれなりの密度を保たないと…という気がしてしまいました。

レイとルークのパートについては、あのレイとカイロ・レンの「魂の交信」が多すぎた。ああいう場面はここぞ!というときに入るとすげえ効果的だけど、繰り返されるとその次元のラインを観客が見失いがちになると思う。レイというキャラクターもカイロ・レンというキャラクターもどちらも今までにはいなかったタイプで大好きだし、ふたりが光と闇で双方から手を引き合うみたいなのはそれぞれの危うさも相俟ってスリリングでよかった。スター・ウォーズはひとつの血脈を描いてきたサーガだけれど、新世代においてはそうではない、ジェダイとは血ではないという方向性を見せるのはいいと思うし、時代に合った描き方だなあとも思う。思うんだけど、とはいえやっぱりルークの描き方に不満が残るのも事実です。非常に下種な言い方をすれば、このエピソード7〜9には、エピソード1〜3が絶対に切れなかったカードが3枚あって、そのカードがハン・ソロ、レイア、そしてルークで、しかも時を経たことでそのカードの価値はいや増している。その中でもいちばんのドラマを背負ってきたルーク・スカイウォーカーというカードをこんなふうに使ってしまったのか…という気がしてならない。最後、たしかにルークは文字通り一筋の光とでもいうべき存在感だけど、かれはレイを本当に導いたんだろうか?という、せめて最後にかれがなした仕事をレイに刻みたかった気がしてしまう。ジェダイとは血ではないというのならなおさら。

もちろん、BB-8はかわいいし、チューイとルークが再会するところ最高だし、BB-8はめちゃくちゃ賢いし、ルークがR2-D2と交わす会話はすべてが落涙必須というかルークがここにおいてもっとも心安く話しているのがR2-D2というその事実が尊いし、あんな映像みせちゃうR2-D2は卑怯で最高にかわいいし、ルークがC-3POに見せるウインクでかるくしねるし、そしてBB-8はかわいい。なんかドロイド絡みのことしか書いてないやないか!ポーもなんだよ俺のドロイドは?とか言っちゃってんもーかわいいかよーーって感じです。結論:ドロイド最高。話題沸騰のポーグも確かにかわいいけどああいうのには強い(食指が動かない)わたし。それよりもあのキラキラ雪狐さんのほうがきゅんとくる。そしてファーストオーダーはあの最高指揮者のもとでなんだかこれから苦労しそうだねと思いましたマル

なんか、今回ライアン・ジョンソンが脚本もシングルクレジットなので、うーんあまり私と趣味が合わないんだろうなーという気持ちです。そしてローレンス・カスダン帰ってきて!と思ってしまう…(もともとカスダン贔屓なのは否定しない)。次はJJが監督復帰するそう。いやーどうなることやら。ともあれ、いろいろああだこうだいいつつも、これだけ爆発的なコンテンツ力を持った作品をリアルタイムで公開を楽しめるのはありがたいのひとことです。そりゃエピソード9のあとも3部作やっちゃうよ!とか言い出すわけだよ!