「百年の秘密」ナイロン100℃

2012年初演、6年ぶり待望の再演です。初演も拝見しておりますが、あまりの筆力にケラさん最近の作品筆力ありすぎて心配になる!と言っていた記憶。メインキャストもほぼそのまま続投。濃密な、隙のない、演劇の愉悦、醍醐味が詰まった時間でした。

ケラさんは初演の時に「女性の友情物語」を書きたいわけではないというようなことを仰っていたと記憶していますが、確かに「友情」という言葉でくくるのは相当ではないかもしれないけれど、なんというかこれぞ「おんなふたり」の物語だなあと思いますし、女同士の友情は時にもろいかもしれないが、時に信じられないぐらい強靭であるということを見せてくれる芝居であるとも思いました。友情、というか、関係、というか。そのあたり、ケラさんは女性を描くのがうまいと昔から言われていますけども、その二人の関係を描くときに「秘密」を中心にもってきているのが本当にすごい。唸らされます。

タイトル通り100年のスパンの時間を行き来するので、場面によっては誰よりも観客が「このあとに起こることを知っている」という視線で登場人物を見ることになるわけだけど、それでもこちらに居心地の悪さを感じさせない、いらいらさせない作劇なんですよね。そしてどの場面も会話が本当に濃密!これがやっぱり長尺を感じさせない秘訣なのかなあ。相当な公演時間なんだけど、それでも一瞬たりとも「長い」と思わない。さりげない会話のようでいて、めちゃくちゃ練られている。

大きな楡の木を中心に据えたセット、それが居間にも庭にも無理なく展開できるのはさすが演劇の見せ方の妙という感じ。あのプロジェクションマッピングを使った見せ方、オープニングがすばらしいのはもう言うまでもないですね。演劇における映像の使い方、もう10年以上前からナイロンが10馬身ぐらいリードしてるって言い続けてますけど、もはやその距離が縮まる気配がない。

犬山さんのティルダとリエさんのコナがすばらしいのはもちろん(演じる役の幅だけでなく、その時その時の場面をこのふたりががっちり支えている)、再演見て思い出した、そうだったわたしこの芝居の大倉さんが演じたエース大好きだったんだ…っていうね!自分だけが気にかけられることへのいたたまれなさに押しつぶされそうになってる長男…良い。良さしかない。あと鬼のようにスタイルがいい。長田さんの声の良さが活きる語り部ポジションのメアリーも大好きです。いやもうね、全員良い!ほんとうに何気なく全員が凄いことをやっている、それを客にすごいと感じさせないほど何気なくやってるっていう感じ。いやはやほんと芝居の醍醐味ってこういうことかと思いますよ。

百年のスパンでの、ある1日、ある時間を切り取ってみせつつ、けれどそれだけが彼女らの人生だったわけではない、というところ、ほんとうにぐっときます。コナにとってティルダは一種の魔法使いであったろうし、それはその逆もしかりで、その魔法が解けたことがあったとしても、それですべてがなくなるわけではない。「はじまり」に戻るラストショットの鮮烈さ!いやはや、再演なので、良い芝居を観られるとわかって出かけて、見ながら本当に面白いな!と堪能して、見終わった瞬間にやっぱり最高に面白かった!とため息をつくような経験て、なかなかできるものではない。よい時間を過ごさせていただきました。