「七月大歌舞伎 昼の部」

  • 松竹座 1階5列22番

昼の部は「廓三番叟」(初めて見た!)と「車引」に続いて、襲名演目である白鸚さんの「河内山」、幸四郎さんの「勧進帳」という顔合わせ。「車引」、扇雀さん桜丸に鴈治郎さん梅王丸という配役で、このご兄弟での「車引」はなかなか貴重なのでは…!?割とよくかかる演目なのでいろんな役者さんで拝見していますが、いちばん直近で観たのが勘九郎さんの梅王丸ということもあり、里心に火がついたとかつかなかったとか…(ちーん)。

河内山もよくかかりますよね~。俊寛と河内山が上演されない年はないのでは!?芯をとる役者のしどころとか座組の顔ぶれとか上演時間でこう、選ばれやすいところがあるのかな。今月の松竹座、殊勲賞をあげるとしたら歌六さんなのではないかと私は思っているんですけど、御浜御殿綱豊卿の勘解由も油地獄の徳兵衛もすばらしいし、この河内山での出雲守がまた絶品。放埓な殿様ではあるんだけど下品になってない、役の大きさがちゃんとあって矮小化されてないというのかな。だからこそ白鸚さんと対したときの場に緊張感がちゃんと持続していて見ごたえのある一幕でした。

さて昼の部のメインイベントと言って差し支えない、勧進帳でございます。なんといっても仁左衛門さんが富樫でおつきあいくださるという!歌舞伎座勧進帳を見逃したので、というか新幸四郎さんの弁慶を拝見していませんでしたので、この機会に飛びつかないわけがあろうか。いやない。いやもうほんと、隅から隅まで歌舞伎を!!見た!!!という充足感にあふれた70分。満足度ストップ高でした。仁左衛門さんの富樫の凛とした佇まい、幸四郎さん弁慶の大きさ、山伏問答の丁々発止ぶり、「いかに、それなる強力」からの緊迫感…!あの空気が右に、左におされるような、圧が目に見えて行きかうような空気、最高でしたね。もうずっと見ていたかったもんね。

富樫、思い入れあって去る場面も思わずわっと拍手があふれたし、その後の義経とのやりとり(判官御手を…でウっと泣きそうになった私だ)も素晴らしかった。そして最後、花道に残った弁慶の一礼、からの大きい大きい飛び六方…。いやー、もう幕切れで思わず「満たされた…!」とひとりごちるほど満足、満喫、堪能しました。なかなか弁慶という役に巡り合わず、ご本人も自分は弁慶をやることはないのではないか…と不安に思われた日もあったとのことですが、だからこそのこの大きさ、ずっとこの高みを見据えて憧れてきたからこその弁慶なんだなあというのがひしひしと感じられ、この役の中に心が透けてみえるような体験こそが芝居見物の醍醐味だよなあと改めて実感いたしました。