「メタルマクベス disc1」

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髑髏城4+1シーズンで終わったかと思ったらまだだ!まだ始まってもいねえよ!(文字通り)ということで次はメタルマクベスがキャストを変えて3バージョン連続上演っていう、この関東平野でまだ公演をされるおつもりか…!てまあこの話はこれぐらいにして。3バージョンの出演者、最初のdisc1にこの人の名前を見たとき私が思ったこと。相変わらず古参を殺しにくるやないか!よろしい!受けて立つ!その名前とはもちろん橋本さとしその人です。

そのあたりの思い入れはもう前に書いたので省略させていただくとして、12年ぶりのメタルマクベス再演(12年ぶりかよ…とちと遠い目になりますな)、おそらく劇場の機構とキャストの見せ場的なところで足したり引いたりしたシーンも結構ありました。まあそもそも上演時間がほぼ4時間なので、足されていないわけがない。

しかし、髑髏4+1バージョン全部見て、この劇場の機構にも「それ もう 見た」感満載になっていた客としては、演目が変わり、そしていのうえさんが前回を踏まえて劇場機構を活用していて、そこが非常に新鮮でしたね。ステージアラウンドは座席によってよりによってセンターがもっとも見づらい、という罠に陥りがちなのですが、今回なるほど!と思ったのは間口を広くして左右で別の場面を展開させるという手法。これ、サイドの客から見るとめちゃくちゃ役者が近いので満足感があり、いちばん視界が死んでるセンターで芝居がないのでストレスが低い。照明も、フロントに照明を組めない分、メインとなるセットに強力な装置だったり照明だったりを仕込んでいたのもよかった。生バンドを入れた関係もあるのか、ちゃんと最後にメインステージで芝居が終わるので、休憩時退出時の動線ラクという思わぬ恩恵も。終盤に大崩しになったセットの見せ方も、巨大建造物感満載ですごく好みでしたね。最初の頃感想で、むちゃくちゃ回るぞ!と聞いていたのですが、構えて見たせいかたしかによく回るけどさほど気にならなかったです。

マクベスマクベス夫人にめちゃくちゃ歌える人がきてるのでおふたりのナンバーが増えており、代わりに?リンスとダイエースプレーの歌はなくなってた。あと個人的に痛恨だったのは七光り三度笠が消えたことですね…松下優也くんのキレキレの踊りで見てみたかった…やましい気持ちはゼロでござんす…あんな名曲ないよ…。レスポールJrはグレコとの口説きの場面がスパッとなくなってたのも驚いた。あれJrの結構なしどころじゃない?(原作マクベスにも勿論ある)さとしさんと濱田めぐみさんの歌がすばらしいのは言うまでもないんだけど、やっぱり曲が増えると一気に尺が長くなるので、たくさん歌わせるより歌唱力ドヤ曲1曲に絞って朗々とやってもらったほうがよかったかもとは思いました。

野心はあるのにどこか非情にも非道にもなりきれない、マクベス夫人と「わたしもあなたも驚くほど小さいわ」と語るシーンがあるけど(「小さい箱にしとけばよかった…!」名シーンですよね)、このマクベス像にさとしさんがずばっとはまってた。前半歌いながらの殺陣とか、これから磨きがかかるんだろうなと思うシーンもあったりするけど、後半の、あの魔女の予言にすがり、その予言がひとつひとつ打ち崩されていくあたりの絶望と狂気の際、みたいなところから、それでも力で押し戻そうとする悲哀が、自他ともに認めるパワープレーヤーであるさとしさんの熱量と相まってものすごいカタルシスがありました。

冒頭の登場からぐっとくるものがあったし、じゅんさんエクスプローラーとキャッキャウフフしてるのそれだけで尊いし、もういつまでもこの二人見てたい!って感じでしたけど、個人的に一番キたのは粟根さん演じるパール王との対決シーンですね。ふたりの間合いの息の合いよう、音響とのタイミングの合い方、全部が音がするほどズバッズバッとはまっていて、これ、この感じ、ああ私は今新感線を観ている!!!という喜びに胸がいっぱいになって泣けてきて参りました。またふたりがねええええ、もう無駄にかっこいい。かっこよさを湯水のように無駄に浴びせてくるこの感じね!これだよ!!

じゅんさんもかっこいいのとおもしろとのバランスが絶妙で最高だし(判決もとい半ケツを言い渡すじゅんさんと止めるさとしさん、幸福な絵面過ぎだろ)、粟根さんのさとっさん呼びもほんとありがとうございますだし、いやもうね、古参のノスタルジーと仰ってくださって結構ですこればっかりは。そこから自由になってこの3人の共演を冷静な目で見るなんてできないししたくないよこればっかりは。

濱めぐさん歌唱力はもちろんキュートなマクベス夫人でさとしさんとのバランスがめちゃくちゃよかったなー。植本さん猫背さんはなんつーか、もう打席に立ったら確実に塁に出る感というか、任せておける!感がすごい。頼りになります。松下優也くんのJr、「明けない夜はSO LONG」をめちゃかっこよくめちゃ気持ちよさそうに歌ってたのが印象的でした。あそこはかっこいい場面だ、うんうん。

カーテンコール、もちろん最後に出てくるのはさとしさんで、ああああこの!!!センターに立つさとしさん!!!ってもはや感慨しかない。あそこの笑顔はほんと…ずりーですよ!そしてハケていくときにじゅんさんと肩を叩き合って笑顔を交わしていたのがね、もうね、リアルで胸の前で手を組んだしかみさま…もうじゅうぶんでございます…みたいな満たされた気持ちになりました。いやほんと、この感想を締めくくるのはこの言葉しかないっしょ!
おかえりなさい、さとしさん!!!