「カメラを止めるな!」

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噂が噂を呼び当初たった2館のみの公開だったこの映画が今やアスミックエース配給の元全国拡大上映!ありがたい!ありがとう!ということでいそいそと見に行ってきました。いやーーーーおもしろかった!!!!!これはぜひ!!!たくさんのひとに見てほしい!!!!ということで以下映画の展開を含む感想ですが、
おっとまだ見てない人はここまでだ。
SNSでも皆口をそろえて言っているようにぜひ何も知らない状態で観に行っていただきたい。とはいえ、この映画、ネタバレして面白さがなくなるわけでは全然ないです(むしろもう1回見たいと思う人が多いのではないかと思う)。それにここまで評判が先に耳に入ってしまったらもうそれはすでに「何も知らないまっさらな状態」ではないのでは?いわゆるエモばれというやつをもうしてしまっているのでは?確かに!いやでもこの映画はそのエモバレを絶妙にフラットにしてくる構造なんですよ、つまり…
おっとまだ見てない人はここまでだ!以下畳みます!

文字通り口コミで爆発した映画なので、私もある程度期待値あがってたし、なんとなくゾンビが出てくるんだよね?(映画のポスターがそう)というぐらいの認識はありつつ、しかし先にご覧になった方が皆口をそろえて「何も知らない状態で行って!」と仰っていたので、それ以上は深堀りせずに足を運んだんですけど、最初の30分のね、あのだんだん不安になる感じ。みんなが面白いといっているから何かあるんだろうけど、これは…いったい…と思いながら見ているあの感じ。手持ちカメラの揺れに若干酔いそうになりつつ、なんとかこらえた先のエンドロール…。これ、あげた期待値、あげたハードルが多分ここでみんないったんゼロになる、ゼロまではいかなくとも最初のハードルよりは低くなる、そんなことないですか。私はこの時点で「で、ここからどういう…?」てちょっと斜に構える気持ちになったし、あの揺れ揺れカメラがもう一回きたらつらいな!とかも思っちゃってました。

駄菓子菓子!
その最初の30分に感じた違和感のすべてが、その背景が明かされ、人物配置が見えて、そして怒涛のように回収され回収され回収されまくる残りの30分の凄さたるや。もう、気持ちいいことしか起こらない。前半に感じた違和感が大きければ大きいほど後半の快感が倍掛けでやってくる。いやすごいです。どんどん見えてくる、どんどんわかってくる、その楽しさ、面白さ。趣味の護身術、「いやちょっと」、倒れたカメラ、ちょうどいい場所にある斧、そのすべてがもう、どうしようもなくおもしろい!

中盤の人物配置の見せ方も最小限のエピだけなのにそれが全部後半でクリーンヒットしてくるんだからたまらないです。ドラマ現場あるあるとでもいうような主演女優のわがまま、主演俳優のこだわり、ADにやたら細かい注文つける役者、台本そっちのけでいちゃつきだすカップル…嗚呼!最初はこんなはずじゃなかったのに!どんどん志の低い方へ流れていかざるを得ない現場の悲哀!だからこそ、あのカメラが回ってからの「これは俺の作品なんだよ!!!」に「いったれーー!!」と応援せずにはいられない。

鑑賞後の感想をいくつか読んでいると、三谷幸喜の名前をだすひとが多く、わかる!と思いました。まずこの映画の大前提である「ワンカットでドラマを撮ること」自体、三谷さんがWOWOWでやったトライアルが記憶に新しいですし、出演者のあれやこれやで台本が変わっていく「ラヂオの時間」なんかもちょっと似たテイストがあります。そして何より、三谷さんの最高傑作といっても過言ではない「ショウ・マスト・ゴー・オン」のスピリッツを感じるひとは多いんじゃないでしょうか。つまるところ、「カメラを止めるな!」は文字通り映画における「幕を下ろすな!」なんですよね。作品が似てるってわけじゃなくて(そんなこと言ったらバクステものはみんな似てることになっちゃう)、その精神が似てるって思うし、ドタバタのようでめちゃくちゃ緻密に組み上げられている脚本だし、その緻密さを「どうだこんなに緻密だろ」って見せるんじゃなくて、そのホンの向こうにある熱量にちゃんと手を届かせてくれる作品であることが、なによりすごいと思います。終わった後、思わず拍手が起こるっていうのも、観客がその「カメラを止めるな!」の熱量に触れたからこそなんだろうとおもうんだ。

ゾンビものの映像を撮る時のギミックの数々をたくさん見ることが出来ますが、メイクも血しぶきも生首もやるのはほんとうにたいへんだ!ほんとうにたいへんだからこそ見ている方は面白くてしょうがない。生首を放り込んでローリングをキメたのかっこよかったなー。「カメラは止めない!」「めっちゃカメラ目線じゃん」笑ったなー。創作って大変で楽しくてやっぱりめっちゃ大変だ。それはこの映画そのものの創作現場でもそうだったんだろう。低予算映画、無名のキャスト、そしてこの異例の大ヒット。素晴らしいものが必ず売れるなんてことはもちろんないけど、でもたくさんの人が良いというものには必ずそれだけの理由があるんだってことを改めて思います。本当に最高の時間を過ごせる90分間でした。すばらしい仕事した上田慎一郎監督をはじめキャストスタッフすべてのひとに特大の拍手を送りたいです!