「プーと大人になった僕」

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マーク・フォスター監督。原題は「クリストファー・ロビン」ですが邦題の示す通り、大人になったクリストファーがふたたびプーと再会するお話です。

「100エーカーの森」にさよならを告げた後のクリストファーは寄宿舎での辛い生活、父との別れ、戦争、結婚、会社勤め…を経験して、すっかり心をすり減らしている。勤めている旅行鞄部門の業績は伸びず、大幅な経費削減案を上司から求められる。家族で過ごすはずだった休日を返上して仕事にかかりきりになるクリストファーは、もう自分の娘にも「なんにもしないでいる」なんてことは許されないと話す大人になっている。そこに、100エーカーの森で目覚めたプーが、仲間を探しに木のうろをくぐり抜けるとそこは現在のクリストファーの居場所につながっていた。

「大人」になったクリストファーには、プーと遊んだ記憶はあって、かれと大事な時間を過ごしたことを忘れたわけではないんだけど、眼前の「やらなきゃならないこと」にがんじがらめになっている今、来られても!という戸惑いと、うっちゃっておけないのはもちろんなんだけどでもいまここにいられたら困る!という気持ちしか最初は持つことが出来ない。そりゃそうだよね。そりゃそうだよ。個人的に「少年の心を取り戻す」的なことに「ハアそうですか」的感慨しか抱けないので(少年の心は少年が持っているからいいんだよ、中年は中年の心を持てよ)クリストファーが安易にプーに引っ張られないのはよかった。

クリストファーが100エーカーの森に戻ってきて、イーヨーたちを見つけて、あの丘でプーと肩を並べるシーンが美しいのは、彼が少年の心を取り戻したからではなくて、生きていくどんな人間にも、いくつになっても、物語を信じる心が力を与えてくれるんだってことがわかるからで、切り離してきた過去の自分と今の自分がひとつになる、なることができたからなんだと思います。あのシーンはほんとうに美しかった。

イーヨー(わたしのイチ押し)やピグレットやティガーがあのもふもふスタイルのまま縦横無尽に画面を飛び回るのを見ることは無条件に楽しかったですし、最終的に限られた富裕層だけではなくてみんな有給休暇取って旅行に出かければ鞄も売れるしwin-winじゃね!?みたいな落としどころがついてなるほどなー!てなりました。ユアン・マクレガーのクリストファー、絶妙なキャスティング。リストラ対策で苦悩するのもプーたちと大騒動を繰り広げるのもなんともいえないチャーミングさがある。奥さん役がヘイリー・アトウェルだったのも個人的に嬉しかったです。ペギーさん!(ちがう)