花組公演「ポーの一族」


初日!元日に行ってきました。観劇歴長くても元日に芝居の予定を入れたのはさすがにはじめてです。大劇場自体は子供のころいちど「ベルばら」を観に連れてこられたことがあるんですけど、もはや記憶もおぼろ!なので、ほぼ初大劇場でした。宝塚でポーの一族をやる、と聞いてそれはぜひ見てみたいけど東京はチケットが取りにくい…じゃあ帰省中に見ちゃうのがいいんじゃないか!2日と3日は箱根駅伝があるから元日ね!というめちゃくちゃ気軽にスケジュールを決めましたが、いやー元日観劇、大いにアリですね。これから毎年元日は宝塚でもいい、ってそんな簡単にチケット取れたら苦労しませんってば。

以下原作を知ってる方には当たり前事項の連打ですが、ネタばれいやー!な方はこの先お気をつけて。

演出の小池修一郎さんの宿願でもあった「ポーの一族」上演ということで、本当にそれがよくわかるというか、原作からインスパイアされた的な、ポーの一族「ふう」なものでお茶を濁すことを一切しない、ガチンコ真正面からのポーの一族でした。そこがまずすごい。いやなにがすごいって、見た方にはわかると思いますが、あのエドガーが作る水車が原作そのまんまなのがすごいですよ。そこかよ!いやそこですよ。一事が万事というか、だってあれ、あの形、水車って一目見てわかります?記号としてあまり役にたっているわけではない(し、そのあとであの水車が活きるエピソードが原作にはあるが、そこは割愛されている)、もっとわかりやすいものでもよかったはずなのに、そこはもう絶対水車だったんでしょうね演出家の中で。なんというか、執念を感じましたよわたしは。

いったんメリーベルを解放したのに最終的にエドガーが彼女をこちらの世界に引き入れてしまうところ、オズワルドとユーシスの話をじっくりやるには尺が足りないということは明らかで、だったら違うエピを創作してもよいのではと思うところだけど、あんな駆け足でも原作通りにやるっていうのもすごい。たぶんね、尺さえあったら小池先生は沈丁花いたずらな小枝よっつってそこでもう1曲歌わせちゃってたと思うもの。あとあんな短い時間しか出ないのにユーシスの完成度が高い(衣装もあのまんまだ)のもすごい。

ポーの一族を舞台化するって聞いたときに、どこをクライマックスにするのかなっていうのが一番興味のあったところで、物語の大枠にエドガーとアランの足跡を語る関係者たちの話をもってきたので、だとすると「おぼえているよ魔法使い」あたりを持ってくるかな?と思ったけど、これも直球に「きみもおいでよ ひとりではさびしすぎる」の方でしたね。つまるところ、あの不思議に透明な少年の一瞬と、その刹那と永遠、そこにある孤独というのが小池さんにとってのポーの一族だし、それをあの板の上で表現したかったんだろうなあと思いました。

その一種の透明さ、というのは宝塚のスターにも備わっているところがあると思うんだけど、その類似性がこの舞台を原作の手触りがちゃんと残るものにしている大きな要因なのかもなーと。皆さん美しいのはもちろんなんだけど、ただ美しいだけじゃない、永遠に生きるのに、どこか刹那を感じさせる美しさというようなものがね、エドガーにも、明日海りおさんにもあったように思います。

演出としては、ラストのクレーン演出、マジか!?ってなったけど、その瞬間に周囲のオペラグラスがザッ!と音を立てて持ち上がったのをみて「こ、これが噂の…!」と思いました。ほんとに「ザッ!」って音がするのねあれ…あと分身エドガーにもそういえばびっくりしたな…でもこれはエリザベートでも見た…とも思いました(笑)

リーベルの「アラン、わたしたちといく?時を超えて、遠くへいく?」がほんと漫画のまんまで、あとエドガーがアランを迎えにくるシーンの、大きな窓がゆっくりひらくところとか、そう!それ!ってなりましたね。みんなああいう場面、ああいう音、ああいう風を想像しながら読んでたんだねって不思議な気持ちになりました。

衣装が非常に華やかで、キャストのみなさんあの二次元衣装をばっつり着こなしていらっしゃるのがさすが!学校の制服とかさー、あのブーツインがあんなハマるのずるいでしょ。シーラとかほんとに漫画から抜け出てきたみたいだったもの。アラン役のひとのすっきりした佇まいもよかったなー。アランにはちょっと大人びてる感じもあったけど、繊細さがそれをカバーしてあまりある。明日海さんは美しいのはもちろんだけど、走り方がぴょこぴょこしてなんか妙に少年ぽさがあったのがかわいかった。

芝居のあとに華やかなショーがあって、個人を認識できていないのでたいへん申し訳ないながら、いやー出てくるひと出てくるひと皆華があって見ごたえあるううう、と楽しみつつ、例によってここぞというところでザッと持ち上がるオペラグラスの波におおお…と感動したり忙しかったです。元日だからなのか、毎公演そうなのかわからないですけど、明日海さんからごあいさつがあり、そのトークのほわほわ感とショーのドヤ感のギャップも楽しかったなー。そうそう、初日は萩尾望都先生がご観劇で、紹介されて立ち上がり一礼されるモー様という貴重なものを見てしまいました。

観劇前から観劇後までまるっとふくめて楽しかった!いい1年のスタート、よい観劇初めでいうことなしです!