終わりなき闘い・2

昨年暮れにTHE YELLOW MONKEYの2019年のニューアルバム発売、それをひっさげてのツアーが発表されたわけですけども、え?大丈夫です、書くブログを間違えたわけじゃありませんヨ!今回ネタにしたいのはチケットのことです。チケットの発売方法のこと。これが自画自賛じゃないが(そもそも私が考えたわけではないので自画じゃない)なかなかよくできてるんじゃないか?と思ったので書いておきたくなったのです。

4月から始まるTHE YELLOW MONKEYのアリーナツアーのFC最速先行が現在受付中なわけですが、簡単にまとめるとこのようになっている。

  • すべて電子チケットであり登録された端末(スマホ)にのみチケットが表示される。
  • 複数枚申し込む場合には申し込み時に同行者を指定する。指定する方法は携帯の電話番号と電子チケットアプリのID。
  • 同行者の変更はできないが事前にシェアメンバーを5名まで登録でき、その間でのチケット譲渡は可能。
  • シェアメンバーは当落発表前まで登録可能だが、それ以降は変更不可。
  • 予定していたライヴに行けなくなった場合は、公式のチケットトレードサービスを利用できる(バラ出品が可能)。

いや、なかなかすげえな?と思うわけです。これはかなりよく考えられている、と思うわけです。
チケットの高値転売については東京オリンピックを前に法改正が行われるまでになっているわけですが、逆に言えばようやく「なんとかしなきゃね」というステージにきたという感じで、この終わりなき闘いはもう長年続いてきているわけです。自分がチケットにまみれた生活をしているだけにぜんぜん他人事ではない事態が、もう相当期間放置されてきた(もちろん、高値転売の主戦場はもっとすさまじいとは思いますが)。

今回のTHE YELLOW MONKEYが(というか業務委託した会社がというべきか)採用したシステム、まず同行者を指定させる。これはもはやマストの仕様といってもいいでしょう。「とりあえず2枚申し込んで片方高値で売ろう」という素人転売ヤーの門戸を狭めることができる。今回のツアーは同行者は電子チケットアプリのIDさえあればFC会員でなくてもよいので(但し、同行者もFC会員である場合と同行者がFC会員でない申し込みの場合、同行者がFC会員の方が優先して当選する。隙がないねぇ)、業者が複数の架空ID取得して…ってこともできないわけではないでしょうが、そうしてチケットを手にしたところで、吐き出す出口が事前登録したシェアメンバーか相手を指定できないトレードしかないわけですから、業者にはうまみがなさすぎる。

同行者を指定、というところまではこれまでも行われてきましたが、このシェアメンバーというのが今回のシステムの眼目です。半年以上先のチケットを購入させるわけですから、不測の事態によって手放さなければならない事態は容易に想像できるし、その時に売れるか売れないかわからないトレードではなくて、自分の家族や友人に譲りたい!そりゃもっともな話です。トレードもあるけど、そのための枠を別個ご用意しましたよということです。しかしその枠は当落発表になってから追加することはできないし、かつ5人までという制限をもうけましたよと。そらそうですわね、当落発表後にシェアメンバー追加できたら合法的な転売の手助けですもんね。5人という数もいい線なんじゃないでしょうか。

電子チケットアプリのIDを使用するので、たとえばAさんがBさんを同行者にして申し込み、BさんはAさんを同行者にして申し込みみたいなことをした場合、システム的には重複を弾くことができると思いますが、今回はそういう重複申し込みした場合に2つとも当選する場合があるから絶対金払える分だけにしとけよという注意書きもあります。重複したらトレードに出す(かシェアメンバーに譲る)しかない。ここは申し込む側にしてみると状況判断が難しいところ。激戦になるなら2人とも申し込んで確率を上げたいが、重複して行き場のない余剰チケットを手にしても困る。悩ましいところですが、逆に言えば安全パイ狙いの過剰申し込みを抑制できるわけですから、やっぱりこれもよく考えられているなと思います。

チケットひとつにこの騒ぎ。世知辛いですね。正直、私も世知辛いのいやです。世知甘いのが好きです。世知辛いのいや!世知甘くして!松尾スズキさんの書いた名セリフです。
駄菓子菓子!
私にとって世知甘いシステムは業者にとっても素人転売ヤーにとっても世知甘いシステムなわけです。彼らはその甘い蜜を吸って生きている。高値転売いいじゃない、需要と供給じゃない、誰も損してないじゃない、いやちょっと待ったァーーーー!!!さすがにその反論は聞き飽きたぜ!!これについては以前、こちらのエントリでも書きました(だから今回は「終わりなき闘い・2」)。もう、「転売屋から買わないで!」みたいな、事ここに至ってまだひとの善意でなんとかしようとするの、さすがに無理がある。何度でもいいますが、買う側に「買うな」という以前に、売る側にだってやれることがあるはずなんですよ。私が今回の販売システムを「なかなかやるやん」と思うのは、「売る側」が「やれることをやっている」と思うからです。もちろん、一般発売とかそういうところではもっとゆるやかな販売でもいいと思います。その方が間口が広がるし、まだ見たことないひとにも見てもらうにはある程度のゆるやかさも必要と思う。でもFC会員の最速先行ということを考えれば、これぐらいのがっちりした仕掛けを用意してもらえるのは正直ありがたい。売る側にしてみれば何の制限もかけずに売った方が絶対ラクだと思う、それはもう間違いない。でも「転売屋にたかられてチケットが枯渇し、欲しいけれどもルールを遵守し転売チケットを買わず、結局ライブが見られない」という、「もっとも損する人」を出さないためには売る側にこそやれることが沢山あるし、それをきちんと考えてくれているんだなと思えることはやっぱりうれしいことです。

THE YELLOW MONKEYは2016年1月に再集結発表をして、その後いくつかのツアーを行ってきましたが、やるたびに販売方法がブラッシュアップされているなと思うし、それは本当にえらい!と思います。思えば最初のツアーは普通の指定席とSUPER指定席(前方席)を別に受付していたけど、アップグレード制導入によってSUPERに申し込みが殺到し落選祭り、みたいなことが起きずに済んでいる。反省が活かされるって、何より大事なことなのではないでしょうか。今回の販売システムも、やってみたら問題点も出てくると思うし、電子チケットは大規模通信障害が起こったら?なんてことを考えたら不安だし、100%じゃないのはもちろんその通りだと思うんだけど、でもそれをまた次に活かしてもらえる、と思うだけでこちらの心持ちもだいぶ違いますよね。

で、これをなぜこちらのブログに書いているかというと、そう、演劇界はどうなのその辺、というアレです。いやわかる。何万人単位で動員するライヴと同じリソースを演劇界が割くのが難しいのはわかってますし、公演のキャパからして現実的でないものも勿論あると思います。実際、演劇には当日券という制度が多くの場合用意されており、最後には実力行使(並ぶ)ということもできなくはないので、まったく同じことをやってほしいというわけではない。とはいえ、昨今の三谷さんの作品だったり昨年の野田地図だったり、もはやある程度「入手困難待ったなし」とド素人でも予想のつくものはたくさんあるわけで、ここまでではなくとも、売る側に何ができるのか?そして、なにをすればより効果的なのか?って視点を演劇畑の制作者にもこれからは持っていてもらいたいと思うのは贅沢すぎる話なんでしょうか。いやそんなことない、そんなことないはずだ、と思いたい私がおります。よりよいチケットシステム、よりよいエンタメライフが私の未来には待っている!はず!といちシアターゴアーとしては願うばかりであります。