「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」

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マーベル・シネマティック・ユニバースのフェイズ3のラストを飾るのはエンドゲーム…じゃなくて本作です!監督はホームカミングに引き続きジョン・ワッツ

最初のトレイラーが出た時はピーター・パーカーの夏休みがニック・フューリーに乗っ取られる、ってことと、ミステリオって新しいキャラクターが出るよって情報ぐらいで、しかもタイミング的にインフィニティウォーでいいだけサラサラしたあと(ピーターもサラサラしたあと)なので、これは…時系列的にIWよりも前の話をやるってことなの??とか思ってましたが、エンドゲームのフタを開けてみたらがっつりEG後だし、むしろEGのネタを明かさないと作品のキモとなるトレイラーが作れないしっていう、いや大変だったでしょうね宣伝部。

とはいえですよ。MCUを熱心に追いかけてきた人であればあるほど、この春からのキャプテンマーベルそしてエンドゲームの連打で、とくにエンドゲームの「集大成とはッ!!!こうッ!!!」といわんばかりの打撃に、燃え尽きたぜ…まっ白な灰に…みたいな心境になってた人少なからずいたんじゃないですかね?正直私はそういう部分ありました。そもそもEGの時にあれだけ水も漏らさぬ鉄壁のネタバレ防衛線を組んでいたのに、今作はちょっとガード下がっちゃってたものね(具体的なバレを踏むとこまではいかなかったけど)。しかも、今作の新キャラであるジェイク・ギレンホールが演じるミステリオはトレイラーではヒーローっぽい登場だけど、原作ではヴィランだというし、しかも演じているのがあのジェイク・ギレンホール…読めた!みたいな気持ちになったりするじゃないですか。

駄菓子菓子!いやはやMCU底知れないですね。底知れない。ここまで「たぶんこういう展開だろうなあ~」と大勢が想像した展開は確かに当たっているのに、ヴィランの正体もその見せ方も、ここまで「驚異<ワンダー>」を積み上げてくるとはマジのマジで恐れ入りました。映画館に足を運んだ観客に絶対に何か手渡すという意思、そして絶対に現実の社会にコミットしたものを作り続けるんだという強い意思に私はめちゃくちゃ打たれてしまいましたよ。

最初の、MJといい感じになりたいピーターとそれに対するいろんな障害、みたいなのは「楽しいしかわいいけどこれこのままで大丈夫かな?」みたいな気持ちになりましたが、やっぱりジェイク・ギレンホールはやってくれる男ですよね。彼が出てきてから一気に物語がドライヴしだすし、ピーターの前に味方として立っているときにも、その正体が明かされてからも、何とも言えない説得力がある。あれ、最初にピーターがミステリオって、イタリアで謎の男って意味だよって話をして、次に会ったときには自らミステリオだって名乗っちゃうのとか、言ってみれば尻尾がチラチラ見えてるんですよね、ベックって。その匙加減がほんとうまいんだ。だからピーターがあのトニーの遺産を渡してしまったときも気持ちとしては「だ、だめだよ…」と思ってはいるものの、ベックが誰で何を目的としてるかまで読んでるわけじゃないんですよねこっちは。そこからの、まさかのチーム戦でした!そしておまえも!おまえも!おまえも!トニー・スタークに遺恨のあるやつやったんかーい!っていうさ…!

でもってミステリオがドローンとプロジェクションマッピングを駆使してるっていうその種明し、この今日的なヴィランのキャラの立て方がすごい。しかも映画の中で戦闘中にベックが着てるのがまんまモーションキャプチャースーツなんですよね。あの撮影現場の写真が流出しても、みんな「あっモーキャプだ」としか思わない。そこに映ってないものしか想像しない。その構図を映画の中で逆手にとってくるっていう…MCU!お前がほんとにおそろしいよ!しかもですよ、ベックの今際の際に「今はみんななんでも信じる」って言わせて、さらにポストクレジットでは「実際の映像で組み立てたフェイクニュース」でトドメを刺す容赦のなさ!

何しろ「実際にはない映像」で相手を翻弄することができるヴィランだから、「何が本当なの?」ってハラハラが最後の最後まで続くし、ヴィジュアル的にも文字通り虚虚実実の映像がピーターを取り囲むわけで、いやもう最後のほう「もうピーターを休ませてあげてよお!」って半泣きになりそうになりましたよ。ほんと見ごたえあったし、だからこそそれに打ち克つのがスパイダーセンス(ムズムズ!)っていうのがむちゃくちゃ胸がすく思いがするんですよね。

今回はニック・フューリーが事件をもたらすわけだけど、途中でピーターに覚悟がないって言い募るところ、いやちょっとさすがに待たんかいってなったし、まだ高校生なんだぞ!ってなったし、そういうお前がまずなんとかせえよ!ともなったし、最終的にこんなに騙されるなんて、フューリー…おまえキャプマ以降人が変わったように見えるよ…とか思ってたらホントに人変わってるし!でお前が夏休み取ってんのかーい!っていう、本当に最後の最後まで気が抜けなかったです。

MJがピーターのこと気になってるけど素直にそれを口に出せないタイプなのめっちゃよかったな。ネッドとベティのカップルもかわいかったしネッドがスパイディの正体を知ってるってMJに対して先輩風びゅーびゅーなのも好きでした。でもって今作はアイアンマンシリーズ以上にハッピーがすごく大きな役割を果たしてて、保護者的でありながら、何よりもトニーを喪った同志っていう立ち位置ですごく頼もしかった。迎えに来てくれた時ホッとした…。そしてあのロンドン塔での対ドローン戦、シールド投げてみて届かず「キャップはすごい」って言ってくれたの、全キャップファンが心で嬉し涙を流したと思いますよ。そういえばあのエンダ~♪をバックにキャップの写真も出てきたってことは世間的には死亡(又は行方不明)って感じなのかな。そうそう、オープニングの処理もすごいと思ったんだ、サラサラからの復活によるゴタゴタ、センスゼロのアベンジャーズメモリアル映像でEG後の我々の心情をいったんきっちり対象化してくれてるよねっていう。

トニー・スタークという偉大なメンターを喪ったあとのピーター・パーカーの物語ではあるんだけど、喪失を浪花節で嘆くようなしょっぱさがなくて、託されたものをもってトニーのいない世界とどう向き合うのかってことに焦点が合ってたのがすごく好きでした。トム・ホランドくん相変わらずかわいいが過ぎるし、世界の孫って感じだけど、でもなんか、今作でまさに「大いなる力には大いなる責任が伴う」ってことを背中で見せてくれるヒーローになった感がありました。もう孫だなんておそれおおくて言えない。ピーター、あんたはかっこいいよ。

そういえば!今作が私のドルビーシネマ初体験になりました。めっちゃよかった~~~!エキスポレーザーIMAXのあの画面がのしかかるような迫力はないけど、何しろ画面が鮮明で没入感がすごい!あの上映前のドルビーシネマの紹介もめっちゃエッジィで楽しいのでぜひ一度経験してみていただきたい。あなたが今見ている黒は黒ではありません!とか言われちゃって、でもって「ホントだー!」ってなるのちょう楽しいっすよ!

EGじゃなくてFFHがフェーズ3の最後っていうのも見れば納得というか、ちゃんと次への橋渡しをしてったよね。物語はまだ続くという。ほんとどこまで想定してこのユニバースを描いてるんでしょう。ケヴィン・ファイギ恐ろしい子