「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」

三谷幸喜さん新作。三谷さんはああ見えて古典ミステリがお好き…いやああ見えてじゃないよな。今まで手掛けられた作品からしても好きなジャンルだってわかるよな。人形劇も手掛けてらっしゃいましたもんね。

お馴染みのホームズ、ワトソン、レストレイド警部、マイクロフト、ハドソン夫人…と登場人物は原作通りですが、そこは三谷さん、ワトソンの年齢がはっきり明記されているわけではないと注釈しつつ、ホームズとワトソンの年齢を思いっきり離して設定しています。いやしかしこれはこれで…アリだな?(何が)

この作品におけるシャーロックは頭はよすぎるけどまだ稚気がある佇まいで、対してマイクロフトはシャーロックに対する抑圧者ポジション。ワトソンはシャーロックの親友だけど、実は彼にも秘密にしていることがある、というような人間模様。そこに依頼主として飛び込んでくるのが広瀬アリスさん演じるミス・ヴァイオレット。

脚本的には二幕ラストのトランプゲームにおけるシャーロックの「解」と、そこに至るまでのあらゆる会話がヒントになる構成が山場という感じなんですが、しかし絵的には地味な場面が続くのでその辺はちょっと食い足りなかったかもしれない。個人的にはミス・ヴァイオレットの嘘をひっくり返すほうがホームズものらしいカタルシスがあったんじゃないかなという気がします。

キャストもお馴染み三谷組、というメンツは少ないにもかかわらず、すごくいいアンサンブルで、佐藤二朗さんとかほんと劇場で拝見するのめっちゃ久しぶりですね!じてキン時代が懐かしいですね!佐藤さんの絶妙な肩の力の抜け加減と、ゴリッゴリでそこだけ新劇か!とでもいうような強め芝居の横田さんといい対比でよかった。横田さんどんどん貫禄増しちゃって…そして相変わらず美声…好き(漏れ出る本音)。柿澤さんのシャーロックも才気ばしった、それでいて繊細な青年の顔があって、こういうシャーロックもいいな~と楽しめました。迫田さんのレストレイドもよきインパクトプレイヤーぶり。あとワトソン夫人の八木さんがもうすっかり安定の女優ぶりで驚いたっす!