「壽初春大歌舞伎 夜の部」

  • 松竹座 1階1列8番

義経千本桜 川連法眼館の場」。四ノ切、かかる時は間を置かずにかかるような気がするけど私は結構久しぶりでした。愛之助さんの狐忠信は初めてかなー。可愛らしさもふんだんにあってよかったです。佐藤忠信のときの引き締まった空気とのギャップがちゃんと出てたなと。静御前に壱太郎さん、駿河六郎は虎之介さんとフレッシュな座組で新鮮でした。やっぱり話が良くできているし、楽しんで観られる演目ですね。

「夕霧名残の正月」。廓文章の夕霧と伊左衛門のその後、を切り取った一幕。初見です(たぶん)。病気で死んでしまった夕霧、それとは知らずに夕霧のもとに会いに来る伊左衛門。夕霧の死を知った伊左衛門が見る束の間の夕霧とのあの世とこの世の端境での逢瀬…という感じ。鴈治郎さん、扇雀さんのご兄弟での顔合わせで、上方色満載でした。

「大當り伏見の富くじ」。8年前の2月に松竹座で上演され、大評判をとった演目、「熱い要望にお応えして再上演」!これホント幕が開いてからの評判がすごくて、私も日帰りで急遽見に行った記憶があります。またこれをさー、再上演つってちゃんと大阪でやってくれる幸四郎さんのこういうね!心意気!

そこまでやる!?なアクロバティックさもさることながら、端々にある歌舞伎名場面パロディみたいなやつがすごく楽しいんですよね。でもって、わりと好き勝手やっているようで、物語としてはちゃんと鳰照太夫の情の深さ、みたいなところに帰結していく芯があるから満足度も高い。ちゃんとあくどい人らが懲らしめられる爽快感もあり、笑って、情に泣いて、最後スカッとした気持ちで打ち出される。言うことなしじゃないですか。

幸四郎さんのあほだけどひとのよさの前面にでたぼんぼんぶり、猿弥さんのこれでもか!な面白悪辣ぶり、愛之助さんのすっきり男前ぶり、そして鴈治郎さんの花が開くような愛嬌とそれぞれの強みを満喫できる舞台でした。ラストで全員がパリッとした衣装で踊るのも、ファンの心理をよくわかってらっさるー!と感心しきり。幸四郎さんのこういうところ本当にえらい!