「八月花形歌舞伎」

第四部「与話情浮名横櫛」

幸四郎さんの与三郎、児太郎さんのお富で。幸四郎さんの与三郎、初めて拝見しましたが、はまらないわけないよねと思ってたし、また児太郎さんのお富がメッチャいい!!いやーこれは血だよねって言わせてほしいけど、あの婀娜な女っぷりをやらせたときの輝き、お父さまを彷彿とさせる。声もいいよな~~。すごいなと思ったのは芝居の中に「ソーシャルディスタンス」をちゃっかり取り入れてて、紅をつけるところも、ラストの紐を手に取り…みたいな演出で笑いも誘いつつシッカリ見せるの、舌を巻きました。コロナ以後で創作物はどう変わるか?って話はよくあがるけれど、今回の遠征で見た舞台のうち、もっとも(コロナを象徴するような)ソーシャルディスタンスを消化してたのが歌舞伎だっていうのが面白いですよね。これは歌舞伎という芸術がどこかメタ的な楽しみ方をするからこそで、ほんっと、懐深いぜ…!と唸りました。

第二部「棒しばり」

勘九郎さんと巳之助さんのコンビでおやりになるのは5年前の納涼以来ですね。そのさらに2年前には、三津五郎さんと勘九郎さんで踊られたのだよなあ…としみじみしてしまうし、もっといえばやはり勘三郎さんと三津五郎さんのことも頭をよぎってしまうのだった。いやしかし、そんなおセンチメートルな気分を吹き飛ばすほどに、ただ、ただ、楽しそうだった。勘九郎さん、めっちゃくちゃ楽しそうでしたね!!いやもう、顔から「楽しい~~~~~!!!!」ってオーラが音を立ててあふれ出てくるようでした。また5年前と比べてお互いの力量があがり、あがったうえで息が合ってるから、舞台の全方位が隙のない楽しさでうまっている感じ。扇雀さんがこれまたむちゃくちゃよくて、いやーどこを見ても楽しい…芝居見物の醍醐味かよ…とうっとり。

第三部「吉野山

猿之助さんの佐藤忠信七之助さんの静御前、猿弥さんの速見藤太の顔合わせ。澤瀉屋さんの吉野山、初めて拝見したのでむたくた新鮮だった…!そして猿之助さんの古典を見るのもちょう久しぶりのような気がする。あの目線をくばるたびに客席がぎゅぎゅぎゅーーと吸い寄せられる感じ、ほんとすごい。は~あ掴まれる掴まれる、と2階席から楽しく拝見しました。七之助さんの静、出のときからずっと客席のうっとりが続く美しさ。猿弥さんの藤太の楽しさは鉄板。満喫しました。

余談ですが、歌舞伎座の入場時のコロナ対策、9日に第二部を見た時はアルコール消毒+検温からチケットもぎりの順だったのが、同日の第三部でチケットもぎりからの消毒検温に逆転してた。きっと私のようにチケットを手に持ったままうっかりアルコールをびしゃーってやる客がいっぱいいたに違いありません(いや、手元にチケットご用意してから入場しようとするとさ…どうしてもさ…)。