「骨の鳴るお空」  転位21

「犯罪フィールドノート」という実際の犯罪をモチーフとした脚本を書き続けている、山崎哲さん主催の劇団なのですが、この「骨の・・」は、日本中を震撼させた宮崎勤の事件を基にしたもので、劇評とかでもずいぶん大きく扱われていた話題の舞台だったのですが・・・。

役者は殆ど4人だけ、しかも全く滑舌も何もあったものじゃなく、台詞なんて殆ど聞き取れない。話は退屈だし、マジで「終わってるなー、全然凄くないじゃないの」などと思っていたのだけど、約一時間半、黙ってみているうちにすっかりそのリアリズムの世界に引き込まれてしまったらしく(自分でも気付いてなかった)、ラストで、Mの妹がつけっぱなしのテレビを消した瞬間、バッハのフーガにのせて、Mが電ノコをセルロイドの人形に振り下ろそうとするところで、それが人形だって知ってたのにもう怖くて怖くて思わず目を背けてしまったのだった。強烈な経験でした。

この芝居は「テアトロ」という硬派な演劇雑誌で、滑舌がどうの、涎を垂らしながら喋らせるな云々とかで、ワースト1の舞台に挙げている人が多かったけど、あの世界を感知できないなんて、評論家も大したことないな、と思いました。