「例の件だけど、」   自転車キンクリート

すごい。すごいよ自テキンは。飯島さん、鈴木さん、君らはすごい!あの超マンネリ話、日本人のお約束、「忠臣蔵」をこんっなに素敵な物語に仕立て上げるなんて!!うわ〜〜んもう言葉にならない〜〜。

いやー、とりあえずストーリーの中心は、時は徳川、将軍綱吉の時代。この時役立たず(?)の将軍に代わって世の中の実権を握っていた柳沢吉保とその部下達で、時代設定等は全く動かしてないんだけど、登場人物は全員、背広姿かワイシャツにネクタイ。掃除のおばさんは今のそのまんまの格好で出てくる。ところがこの仕掛けが凄い効いてるんだよね。紋付き袴じゃないから取って付けたようにならないし、何より、彼らを身近にいるサラリーマンとしてとらえることができるわけ。だからこそ、部下の愚痴もよくわかるし、柳沢吉保のつらさも納得できる。(中間管理職みたい)ところが平凡な日常の中に降って湧いたような「松の廊下」事件。そして浅野家断絶、さらに一年後四十七士討ち入り。ってここまでをすっごい駆け足でやっといて、ここからなんだな。話が進むのは。

世間では「忠義の士」として名高い彼らをどう処分するか、に頭を悩ませたおエライさんが、全部柳沢に振っちゃうの。で、これをまた柳沢は部下の4人に振ってしまうんだなぁ。それで、4人の部下の悪戦苦闘が始まるんだけど、ここで4人の対戦相手になる儒学者小市慢太郎さん実によい。声も演技も良い。でね、突然無理難題を言いつけた殿(=柳沢)に4人はだんだん不信感を抱いてくるんだけど、そこで殿が突然お犬様(綱吉ですから)を斬り捨てて行方不明になってしまうんだなぁ。(これ相当端折ってるなー、この討論の中で「浅野はなぜそんなに吉良を恨んでいたのか」ってゆうのが焦点になってくるの)そこで4人はハタと気付く、大石が何も言わないのは、もしかしたら浅野が何を恨んでいたのか知らなかったからではないか、だから泉岳寺の墓前で切腹しなかったのじゃないか、なぜなら自分は忠義の士ではないから、忠義の士なら、殿が何を悩んでいたのか知っていて助けるべきだったから。4人は慌てて柳沢を探しにゆく。自分たちもやはり何も知らなかったのだと思いながら。

ようやく見つかった柳沢は毛針(このエピソードも泣ける)で釣りをしていて、ここで4人と並んで話すんだけど・・・・「彼ら(四十七士)のやったことは称賛されやすい。派手だからな。だが、派手にぶち壊すことも勇気がいるが、毎日少しずつ何かを成し遂げるのも、勇気のいることだ。」・・・すごい。これはすべての働く人への応援歌だよ。むちゃくちゃ心に沁みた。自テキン、すごい。

この感想、なんだか全然いいところ書ききってない(涙)他藩から引き抜かれて柳沢の下に来た新人さんの「自分は前の藩で人の批判ばっかり言って・・・はめられたみたいになった。だから今度は何でもやってみよう、文句を言う前に、前向きに考えよう、と思って、この藩に来たんです」という話にも涙ボロボロだし、もちろん全編あらゆるところでギャグは冴えてるし、柳沢役の樋渡さん貫禄十分の好演、歌川さんも、いいボケ味でした。他のキャストも、みんなみんな良かったよぉおお!珍しく2幕ものでない2時間半ぶっ続けでしたが、全然OK。テンション全く落ちなかった。こりゃもう今年のBEST1決まりかなって勢いですぞ。

新感線の髑髏がなければ圧倒的にこの作品が97年のマイベスト1だったと思う。というか、この作品もいまだに私のベストオブじてキン不動の一位です。ほんとにほんとにほんとに泣いた。戯曲もないしビデオもないし再演もしそうにないけれど、私にとって生涯忘れ得ぬ傑作です。