「お正月」  中島らも事務所プロデュース

  • スペースゼロ   I列14番
  • 作・演出   わかぎえふ

明治初期、神戸に住む鈴木一家のお正月から話は始まる。舞台は常に鈴木家の居間、そして描かれるのはその時々の鈴木家のお正月。堅い言い方をすれば明治からまさに「今」までの、日本というものを、お正月という視点を借りて描いている作品です。

まずうまいなぁと思うのはもうこの脚本自体というか演出というか、女性陣は全員着物、男性陣は黒のスーツという衣装を動かさず、セットを変えずメイクを変えず、ただ照明のきっかけひとつで舞台上で流れている時間が移っていく設定そのものがまず一本!という感じ。そしてその照明のきっかけ一つで青年から中年へ、あるいは娘から母へ、舞台上から引っ込むことなく、その変化を見事に演じあげる役者陣の底力を見せつけられる舞台でもありました。ほんのちょっとした声の高さ、姿勢、しゃべり方で、一瞬にして時が移ったことを自然に「わからせる」すごさときたら!「演じる」っていうのはこういうことだろう!見たかへなちょこタレント!(誰だよ!)といいたくなりますね、こういうの見せられちゃうと。

それ以外にもミーハー的なツボは盛りだくさんで(笑)もう、初っぱなの粟根さんのあの高いかわいい声での年始の挨拶、あれを聞くためだけに明日もう一回見に来てもいい!と思ってしまったさ。もう芝居の間中そんな調子で、あーーー小市さんなんて声がいいの〜惚れる〜、あーー野田くん顔ちっさーーーい、かっこいーー!黒スーツ似合うーー!植本さん・・・もう、相変わらずうまいなぁホント・・・(涙)、楠見さんうまい〜、えふさんかわいい〜、あーーー粟根さんなんておいしいのーー!(笑)それにしても短髪いいわ・・(惚)短髪好きーー!・・・・・と。
まあそんな感じで盛り上がっておりました(爆)

私が一番くらったのは植本さん演じる三男と、野田さん演じる長男が二人で酒を酌み交わすシーン。ここでの植本さん絶品でしたなぁ・・・うまい・・・。最後にお兄さんがいう「気をつけてな。」には泣かされました。あと、芝居の間何度も「生田神社に初詣に」というセリフが出てくるのですが、ラスト近くで楠見さんが阪神大震災の話をしたとき、5年前の朝、見慣れた風景がボロボロになっているさまと共に、生田神社が根こそぎ倒れて、屋根が落ちてしまった映像を見て、母が「ここで結婚式をあげたのに・・」といいながら何ともいえない顔をしていたのを思い出して泣けてきました。

それにしても、来年の正月からおせちの高野豆腐が気になってしょうがなくなりそうだな(笑)

これがちょうど200本目の観劇でした。素晴らしい200本目で満足満足(笑)