「カノン」  NODA MAP

基本的に前評判やネタばれの知識を入れないで芝居を観ることを旨としているのですが、まあ、こんだけ初日から間があったらそういうわけにもいかず。しかもネット上での評判がそれほど良くなかったのですな・・・。それだもんでちょっと身構えて見に行っちゃったところはあったかもしんないっす。

芥川龍之介の「偸盗」、ビゼーの「カルメン」を下敷きにしているとのことで、それはもう観てまんまというか運命の女、ファム・ファタールに翻弄される男の物語がベースなんですが、後半はもろ件の「事件」が色濃く出ておりました。なのでその事件について野田さんが言う「原風景」的なものを感じる人と感じない人では感想がかなり違ってくるような気はします。

あたしは基本的に「野田さんの芝居はわからなくていい。」と思っています。わからなくていい、というか、完璧に理解出来なくてもいい、というスタンス。まあ野田さんに限らず芝居を観るときはそうなんですけど、野田さんの場合は特にそう。というか、野田さんを理解しようなんて無理なんだもん(笑)。あの人が放つ台詞の一つ一つ、その意味まで「わかる」なんて絶対無理、少なくとも私には。だから野田秀樹が舞台の上で創り出す空気、あの切なさ、美しさ、それを感じ取ることが出来ればそれでもうオッケーなのです。今回それが感じ取れたかっていうとそれがまた微妙なんだけど。ただ今回の「カノン」の場合、中途半端に「わかる」ところが一部不評の原因なのかなぁ、と。だけど完全には「わからない」そのもどかしさは確かに感じましたね。「パンドラ」はそういう意味では手に取るようだったしな。だから今回の感想って微妙なんですよ。キライでは決してないけれど凄い!といいたくなるわけでもない。あ、面白かったなーとは思ったけど。なんかひとつぐっと来させるものが足りなかった感じです。唐沢さんの「俺の罪はカノン」のセリフも、京香さんの「理由なき反抗に名前を付けようとしている」のセリフもすっごい好きなんだけどなーーーー。

ただ野田さん特有の言葉遊びがすぎる、ちょっと強引だっていう感想があったんですけどね、それはそうかぁ?と思いました。あたしは凄く好きだけどなぁ。「丸く座る」とか「自由」=「銃」とか、真骨頂って感じですよね。しかも観たあとでちょっと例の事件のことを調べてみたんですけど、本当に「銃」をもって世界を糺すべし、唯銃主義ってのを唱えたりしてたんですよね、彼らは。だとすると野田さんのこの掛詞は凄すぎ!!って思いました(笑)。あと主犯格の女と男が実は先につかまっていたり、立てこもった中に兄弟がいた(!)り、あーーこういうの知っててもう一回観たら違ってたかも、とも思ったんですけど。というか芝居を観たあとでこういうのを知りたくなっていること自体野田秀樹にやられてるってことか(笑)

あ、役者さんのことを全然書いていない(汗)盗賊の女親分をやった鈴木京香さんは凛としてキレイで格好良かったです。奇しくも初舞台も観させていただいてますがその時より数段良かった感じ。ちょっと台詞回し気になるところはあったんですが。唐沢さんはね、うまいッスよほんと。なんか妙に安定感ある。逆に安定感ありすぎって感じもしましたが。あたしが今回うまいわぁと思ったのはやっぱ手塚さん。好みって事も含め(笑)。あたしが見た回で壁に掛けた絵が落ちちゃうハプニングがあったんですけど、手塚さんがうまーーく拾って掛け直してました。声も不思議とよく通って聞きやすいし、あと大森博さんかなーー。英語の台詞がおかしかった(笑)

最後観ていてすごく思ったことは、「贋作・櫻」になんか似てるなぁってこと。崖っぷちギリギリをのぞき込みたい沙金と、自転車に乗って坂道をブレーキもかけず下っていく夜長姫がすごい重なって見えました。野田さん、「運命の女」好き・・?(笑)