「キレイ」

見る機会がなかったわけじゃないのになぜか素通りしていた松尾スズキさんの作品。大阪での公演がなかったんですよね、これ。でもキャストがあまりにも豪華なのと、非常に評判がよかったのとで、生中継をわざわざ金払って見に行ってきました。だってシアターTV入ってないんだもん。だけど中に入ってからこんなんで見てホントに面白いのかなぁ?と後悔することしきり。しかも上演時間ハンパじゃないし。面白くない舞台でも、それは生だから何とでもなるけど、それが映像だったりしたら、しかもそれが3時間半もある長尺ものだったら、それはほとんど拷問ってやつじゃないですか。

けど結論としてはホントに行って良かったなと。ハマりました、ええもう本当。いつもの大人計画の公演よりはライトに作ってあったからかもしれないですが、この作風はけしてキライじゃないなぁ。完璧に感動させる事への照れというか、あからさまに美しいものへの嫌悪感というか、そういうの私は嫌いじゃないなと。

しかし何しろ実際に舞台を「見た」わけではないので、この感想は断片的なものに終始させていただきます(笑)っていうかね、ハリコナとジュッテン素敵すぎ(涙)ハ「兄ちゃん大好き」ジ「一方俺は、こんな俺を好きというお前が好き。」ハ「じゃあ・・五分五分?」かーーわーーいーーーーー!!!マジで賢くなる前のハリコナうちに持って帰りたい。ケガレに花を咲かせてあげるシーンも大好き。ちょっと疲れるんだけどって、嗚呼もうなんて可愛いの!!ジュッテンも良い〜、宮藤さんがこんなにカッコイイ役者さんだとわ!お見それしました。秋山菜津子さんはもう上手すぎ。一幕のラスト、「私の代わりに撃たれたんだから、これはあたしの親切よ!あたしの親切心の邪魔をしないで!」のセリフは泣けた。そしてケガレ(ミサ)が「あたしはあの時損したと言ったけどホントは嘘。だってカスミはあの時泣きながらストレッチャーを押してくれたんだもの。・・・・とにかくあたしは・・儲けたわ。」このシーンなんかすごく野田さんのテイストを感じたんですけど。

あと、いつもの事ながら古田さんは絶妙でした。何であの人あんなに間がいいんだろうなー。それこそセンスの問題なんだろうけど。篠井さんも飄々とした良い味。片桐はいりさんはビックリするほどきれいでした。松尾さんのあの独特の変な動きと声は卑怯すぎる(笑)映像ならではの感想なんですけど、奥菜恵はマジで可愛い。あそこまでアップに耐える顔ってすごい。南果歩さんも素敵でした。あのスタイルーーー!!!!羨ましい。

異色ミュージカルだとかアイドルが出てるとかなんだとか、そういうこと関係ないお芝居でした。地下室から出ようとするケガレと戻ろうとするミサが交錯するシーン、地下室から溢れ出てくる光、出色でした。そうやってケガレは何度でも帰っていく、あの地下室に。地下室に残したミサがケガレに言う、「外に出たら、キレイなものをたくさん見てね。花はきれいよ、ひらひら散るわ。お金はキレイよ、ピカピカ光るわ・・・」人に食べられないまま腐っていくダイズ丸の「生き恥かくことこそ生きてることの醍醐味」のセリフ、最初と最後に歌われるキレイの歌。心に棘のように引っかかるセリフ、シーンがてんこ盛りの舞台でした。だからこそ、つくづく生で見たかったぜ、ちくしょお。

と、書いておりますとおり舞台を観たわけではないんです。見たのは中継。でも感想を書きたくなるそんな威力があった。この「キレイ」のサントラ今でもすごく良く聞きます。テーマ曲の「キレイ」は勿論「ここにいないあなたが好き」とか超名曲。なにより松尾スズキと出会うきっかけになってくれた、思い出の作品です。