「ラン・フォー・ユア・ワイフ」  加藤健一事務所

イキナリですが。
『演劇には二つのコミュニケーションの方向があって、ひとつは舞台の上での横の関係性。これを「物語性」といい、もうひとつは舞台と客席の縦の関係性。これを「演劇性」と呼ぶ。』by鴻上尚史。だそうで。

その言葉を借りて言うならばこの「ラン・フォー・ユア・ワイフ」というお芝居は非常に「物語性」の高いお芝居だと思うんですよね。良くできたパズルのように、パッチワークのように、一つ一つのセリフや登場人物の行動が紡ぎ出されていく。「演劇」ならではの手法(オープニングの二人の奥さんのシーンとか)も使ってはいるんだけれども、基本的には舞台の上で起こっていることを私たち観客は「観ている」というスタンス。平々凡々な一介のタクシー運転手のジョン・スミス、彼は幸せな結婚をし、幸せな家庭を作っていました。ただ一つ彼が普通でなかったのは・・・・奥様は二人いたのです!(←奥様は魔女風味でお願いします)みたいな(笑)。あとはしっちゃかめっちゃかの舞台の上の人々を、私たちは眺めて楽しむ。この舞台の感想をもし人に聞かれたら「面白いよ」「良くできてる」「楽しい」「笑わせてくれる」と言うと思う。そういう意味では、人に安心して勧められる舞台。でもでもでも。でもなのね。これはあたしの「好み」なのでそれが正しいとかいうわけでは決してないんだけれども、やはりもっとこう、観客である私たちに対する「縦のコミュニケーション」がある方が、あたしとしては病みつき度が高いんだよなぁ。。いい悪いではなくて、お芝居の種類・・・というかお芝居というものに対するスタンスの違いでしかないんだけど。

ただ、この「物語性」に重きを置いたお芝居を楽しく見せるには絶対条件があって・・・それは役者がみんな上手くなきゃいけないってこと(笑)。当たり前だけど、客をいじれば笑いって結構簡単に取れるでしょ?でもそれを一切しないで舞台の上で起こっていることで客を笑わせるっていうのは、台本の力ももちろんだけど、それを具現化する役者の力量がないとただのつまらない芝居になる可能性が大。だから、このお芝居に出ていた役者さん、やっぱみんな上手いんですよ。それも当たり前のように。それはやっぱ凄いと思うなぁ。特に石丸さんなんかもう、脱帽です。ほんとに舞台の上で力が抜けてるよね。キャラメルボックスでおなじみの西川さんを客演で見たのは初めて(のような気がする)なんだけど、頑張ってらっしゃいましたね。おいしいキャラクターだから、もっと弾けてくれてもいいナーとも思ったんですけど。

おまいラン・フォーの感想殆ど書いてねえじゃねえかよ、というツッコミよりも自分が立ち見で観ていることにビックリしました。立ち見までして見たかったんか・・・?