「マシーン日記」  スズキビリーバーズ

プレハブ小屋で女工をレイプしたミチオ。その女工と結婚しミチオをプレハブ小屋に鎖で繋ぐ兄のアキトシは6本指。アキトシと結婚したサチコは昔いじめられっ子で、そのイジメから救ってくれた恩師のケイコが偶然自分の工場にやってくる。ケイコは割り切れる話にしか興味を示さず、数字や機械に憧れ続け、自分の身体をマシーンにしたいと願っている。そんな4人の、暑い暑い夏の割り切れないやりきれない四角関係。

濃い話だった・・・・・ほんとに。なのにあの最後のサチコの「・・・主役?」にカタルシスを感じてしまうのはなぜなんでしょうか?ケイコの最後の「命令して・・・命令して。」に愛を感じるのはなぜなんでしょうか?不思議な作家だなぁ松尾スズキって。暗黒部分をこれでもかと出してくる。「ダメそうな感じ」「うまくいかなそうな感じ」てんこ盛りというか・・。なのになんでしょ、あの最後の突き抜け方。参るよなぁ。

しかし松尾さんの舞台はいい台詞が多いね。「キレイ」も「エロスの果て」もそうだったけどこれも凄くいい台詞が多い。「あたしたちの子供は、10を3で割るような会話はしないわよ」とか。それにしても機械を直すのが得意な男に向かって「あたしあんたのマシーンになる」とはものすごい愛の台詞じゃないかとか思ってしまったのですが。

役者はとにかくもう片桐はいりに全部。そんな感じです。格好良すぎて格好良すぎて。こんなに女優にしか目が行かない(しかも阿部サダヲが隣にいるのに)公演は初めてなんじゃないかと思うほど。松尾さんも書いてるけどほんとこれは片桐さんにしか出来ない役かも。もう脱帽です。阿部さんも松尾さんももちろん最高だったんですけれどもね。阿部さんの、「演じているその役にしか見えない」迫力も凄かった。しかし宝生舞は正直なとこどうなのか?他の3人と較べるのはかわいそうにしてもあまりに浮きすぎだと思いますが・・。じとじとした粘着質な感じを出すにももっとやり方あるだろっつーか。まず台詞聞こえないし!彼女が出ると正直テンション下がった。「謝って欲しいんですよね」のシーンとかもっとイヤそうな感じにして欲しかったなぁ。

それにしても松尾さんて、舞台の上でキスシーン書くのが日本一うまい作家(演出家)だと思いますわ、はい。