「コクーン歌舞伎 夏祭浪花鑑」

個人的昨年度ベスト1が平成中村座の「夏祭浪花鑑」。それがコクーン歌舞伎で再登場です。コクーンでは第2回でもこの「夏祭」をやっているんだけど、そのときは長町裏の泥場で終わったらしいんだよね(歌舞伎ではそれが普通らしい)。でもその時も泥場がすごくよかったよ、という評判を聞いて去年の中村座でも見てみたいなと思ったわけだから、やっぱりコクーンからすべては始まったと言っても過言ではないのかも?

筋書きを読まなくてももう話も見せ場も全部知っているので、歌舞伎を見たときによく感じる「今話はどうなっているのかね?」という戸惑いは感じなくてすみました。逆に言えば、どうなるかわかっている、ここがこの役の見せ場だとわかったうえで歌舞伎を楽しんだのは初めてなんだよね。「住吉」で団七が見違えるように男前になって出て来るぞ、とわくわくして待ってみたり、もうすぐお辰さんの「侠い」の場面だとドキドキしたり。こういう楽しみ方をしだすとほんと歌舞伎って抜けられないような気がしてきます・・・。

今回幸せなことにかぶりつきのお席で見させていただいたので、役者さんの表情仕草、堪能させていただきました!私はこのお話に出てくる女性陣にどうも弱いらしく、お梶さんとお辰さんに泣かされてばっかりなんですよねえ。特にお辰さんは、最初登場のときは「福助さんで見たかったよお〜」とか思っていたんですが、三婦に「おめーが綺麗過ぎるから磯之丞はまかせられんね!」と言われて悔しさに打ち震えるあたり、ああやっぱし勘九郎さんうますぎる!と思ってしまいました。お辰さんの気持ちが手に取るようにわかるんだもん・・・。団七・徳兵衛・三婦のお三方は中村座と同じメンバーだし、キャラ的にもなんだかはまり過ぎだし、もう言うことなし。久しぶりに再会できてうれしいよ〜って感じかな。お坊ちゃま獅堂くんもなんともかわいくて最高。

長町裏の泥場、中村座ではかなり長い溝のようなものを作っていたんですが、さすがにコクーンではそこまでできないかあとかも思いつつ、しかしあの灯のひとたちとの連携や、後ろの壁にうつる影の効果なんかはコクーンならでは!って感じで良かった。個人的にはこの泥場と、あと屋根裏の立ち回りは断然コクーン版のほうが好き!なんかすごく面白くなっていたもんな〜。アイデア自体は中村座と変わっていないんだけど、より洗練されてパワーアップしていたし。コクーンの客席通路で梯子に登って見せるところはまさに圧巻!その前にミニチュアの火の見櫓の梯子を見ているものだから、なんだか本当に櫓の頂上まで登りつめているような錯覚に陥ったり。家がぽんぽん飛ぶ演出も良かったなあ。

ラストの演出を変えていると小耳に挟んでいたんでいったいどうやるのかな、と思っていたんですが、こ、こうきたか!って感じですよね、まさに(笑)。大阪版では野外だということもあって、扉の開きも断然大きいし(背面全部がほとんど開いていた)、扇町外へ飛び出し丘を越えて逃げ落ちていくさまはもうそれだけで居てもたってもいられないようなカタルシスだったんですが、今回はそのスペースのなさを現在とのシンクロ、という形で逆に生かした感じ。串田さんすごいなあ!後半の30分はもう興奮興奮の連続で鳥肌立ちっぱなし。本当に芝居が好きでよかったよ!と思わせてくれる舞台だよねえ。勘九郎さん串田さんのパワーに脱帽、そして感謝。あなたたちと同じ時代に生きて芝居を楽しむことができて幸せです。