「オールディーズ・バット・ゴールディーズ」 M.O.P

俺たちに明日はない」のボニー&クライドばりに派手な格好で銀行強盗にやってきた二人組。入金しているはずの大金めあてだったのに、手違いで金はないわ自分達の後にやってきた二人目の強盗のおかげで立ち往生するわ、なにもかもがうまくいかない。警察に包囲された銀行の中で、二人の強盗と一人の強盗と十一人の人質はいったいどうなるのか?

ワンシュチュエーションで舞台は銀行から一切動かず。前半はどうにも間抜けな強盗犯と、その間抜けさゆえに引き起こされる人質の銀行員や警備員、客とのなんだか不思議なテンションのやりとりが面白く、ちょっとシュチュエーションコメディっぽい展開なのですが、休憩以降後半は打って変わってかなり重厚な展開と、圧倒的な量のセリフの応酬で引き込んでくれます。一粒で二度おいしい作りとでも言いましょうか。

後半において、ほぼ全編「若者」たちと相対峙し彼らを追いつめる「大人」の役割を一身に担っているのが三上さん演じる山下警部なわけですが、私ももうどちらかと言えば(言わなくても)いい大人、と言われる年齢に達しているので、若さゆえの傲慢さをバリバリに発揮して下さるケイスケにもウタコにも勿論ヨシオにも「甘えてんじゃねえよ」的苛立ちを感じないではいられないのですが、しかしそれでもなお、彼らの考えや彼らのしたことを、丸ごと問題外だと捨てておけない何かを感じてしまうのです。それは勿論強盗しても良いとか人を脅してもいいとかそういうことじゃなくて・・・。例えば島を買うのなら、花を買うのなら、真面目に働いてお金を貯めればいい。安保闘争で負った傷だって、いつか癒える、時間が解決してくれる、そうしたらまるで背広を着替えるように新しい世代の自分になって、また新しい人生を歩めばいい。でもそれじゃ駄目なんだ。時間が解決するなんていうことそれ自体が、それに流されてしまう自分自体が死ぬより嫌なことだってある。それは我が儘で、愚かで、傲慢な考え方かもしれないけれど、少なくとも彼らにとっての真実であったのだろうと思うんです。彼らの言ったことの中に一片の真実もなかったろうか?そう思うと、やはり簡単に切り捨てられないもやもやを感じてしまう自分がいるのです。

そんな「若者」への愛情がこの作品には確かにある。
だからこそ、最後の群唱は、とにかく圧巻、です。

前半のとにかくコミカルで楽しい芝居もさることながら、やはり後半の役者対役者のぶつかり合いが凄いです。特に三上さんの渋さとその迫力、うまさ、とにかく見に行ってこい!としか言いようがありません。ポジション的にかなり長いセリフをこなされる場面が多いのですが、そのどれもがセリフに言わされてる感が微塵もなくて素晴らしい!そして最後の最後ですべてをかっさらうドリさんにもわかっていたこととはいえもう脱帽。圧倒的です最後の5分は。久しぶりの劇団公演ですがアンサンブルの良さも、キャストで作ったという装置も何もかもがお見事。胸の中にずっしりと残る、見応えのある作品でした。大満足。

公演終わったので、すごく書きたかったこと追加。
ドリさんもHPで紹介して下さっているけれど、最後の群唱は「明日なき世界」。私はRCバージョンの方しか知らなかったけど、高石ともやさんという方の曲だそうです。
観終わって家に帰って来るまでの間ずーっとこの曲が頭を離れなくて、その度にものすごく泣けてきてこまった。なんともいえず、せつない。

東の空がもえてるぜ
大砲の弾が破裂してるぜ
おまえは殺しの出来る年
でも選挙権もまだ持たされちゃいねえ
でも鉄砲かついで得意になって
これじゃ世界中が死人の山さ
でもよう何度でも何度でもオイラに言ってくれよ
世界が破滅の前夜だなんてうそだろう  うそだろう?