「加賀見山再岩藤」 平成中村座

午前と午後をどっち見ようか迷ったんだけど、やはりここは串田演出のほうかな〜というわけで観てきました、加賀見山再岩藤。古典歌舞伎の「加賀見山旧錦絵」の後日譚という設定だということで、開場前にもひとくさり背景の説明があったり、二幕に入る前にもちょっとおさらいがあったりして初見のお客様に実に優しい気配りが好感。開場してからも場内の照明はかなり落としてるし線香の香りはするし、雰囲気作りもおさおさ怠りなく、相変わらずのサービス精神だなあと。

序幕がいきなり見せ場なんだけど、その最初の骨寄せのシーンからスペクタクル満載で相変わらず見せてくれます。花の山の場の唐突なメルヘン風味も嫌いじゃないですが、個人的に一番ぐっと来たのは四幕の鳥井又助内かなあ。勘九郎さんて、やっぱりこういう役柄のほうが、なんだかとても味があって好きなのよねん。まった七之助くんのおつゆがめちゃ可愛いし健気だし、弟の志賀市がまたいやっちゅーほど泣かせてくれるし。個人的に子役ってどうも苦手なんだけど、この清水大希くんは不思議と気にならない。いや気にならないどころかむしろ好きかもしれない。鼠小僧の時も思ったけど、すごく声がいいんだよなあ。私の前に座っていたおばさまなんて、大希くんが出てきただけで泣いてたもんね。そりゃ早すぎだろって感じですが。

弾正と岩藤の早替えがあるとこも好きだったなー。あれは串田演出ならではの技法かなと。あのオレンジの照明、野田さんもよく使うし流行りなんですかね?もしかして。大詰めの弾正の立ち回りはすっごく好き!特に水の中に仰向けで倒れるとこ、思わずおおお!って口に出ちゃいました。ラストは後ろを絶対開けるだろうなと思っていたので(こうやって観客はスレていく・笑)へええ、って感じではあったけど、お話的に「めでたしめでたし」で終わらないあたりはすごくイイっすね。好みです。

勘九郎さんはまさに八面六臂の大活躍で楽しませてくれます。色々な勘九郎さんを見られてお得かも。あと、私はやっぱり福助さんが大好きだなあと(笑)。福助さんて、絶対コメディの才能あるよね。なんつーか、間が絶妙。

去年大阪で見たときも思ったんだけど、平成中村座は何よりもまずお客様を隅から隅まで楽しませようとする精神に満ち溢れていて、私はそこが本当にすごいと思うしだからこそ大好き。小屋に出かけるだけでこんなにわくわくさせてくれるのって、本当にもう昨今ないことで、雰囲気作りも場の盛り上げ方も、転換の間のちょっとしたつなぎにさえそれは現れていて、少々苦労してでもまた見たい、と思わせてくれる。そのサービス精神に、頭が下がります。