「彗星はいつもひとり」

キャラメルボックスの芝居って、大抵大きなストーリーの流れが二つあって、それが絡んでいくっていうのが多いと思うんだけど、この「彗星」の元だった「レインディア・エクスプレス」というやつも勿論そうで、自殺した中学生の遺書を巡る話と、戊辰戦争の生き残りで不老不死の3人の話が交錯していく話なのね。で、この「レインディア」、私は凄く好きだったんですよ。この二つがどういう風に絡んでいっていたかは正直もう覚えていないんだけど、二つのメインの話それぞれがとても良かった記憶はあって。中でも中学生の子の遺書が読まれるシーンはものすごく胸に沁みたんだよなあ。レインディアで「ええ?」って思ったのはクリスマスに話こじつけたために「レインディア・エクスプレス!」と訳の分からないことをいきなり最後の群唱で言っていたことぐらいだったんだけど。あの唐突さはないよなっていうか。

で、今回の改訂再演?の「彗星」ですが、戊辰戦争の生き残り三人の話はほぼそのまま残っていて、そしてやはりナオ役の坂口さんの演技は素晴らしかったの。北条雷太との切ないロマンスもすごく好き。うーんしかしもう一つの柱である中学生の話は完全に差し替えられていて、そっちがどうにもこうにも弱いというかありきたり過ぎというか。仕事が忙しくて家庭を顧みてこなかった男が、余命幾ばくもないことを知って息子との対話をはかろうとするけれども息子は自分を許してくれない、みたいな。正直なところ、うん、それもう観た。と言いたくなる展開でキャラメルの「安さ」が悪い方向に出てしまった印象。最後の試合のシーンでかかる音楽がまた腰が抜けるほどありきたりで、「二人はこうして分かり合っていってるんですよ、闘うことで対話してるんですよ」っていうのを音楽で説明しようとしすぎ。教頭先生はわけわからんし。ちょっと私の苦手な展開になりすぎてしまったなあ。

雷太が「だけど俺には約束がある」というところや、ナオさんが許せなかった雷太に声をかけてしまうシーンとかすっごく良いんだよなあ。ナオさんと、旦那さんと、雷太のシーンとかはものすごくいいんだよ!いいだけに、もう片方の主軸にのめり込めなかったのが残念です。