「スクラップ・ムーン」 劇団赤鬼

関西で随一の観客動員数を誇る劇団だそうである。前回キャラメルを見に行ったときに前説で加藤さんが紹介していまして、新神戸でやるというのはたしかにすごいものだなあと思い時間があったら見にいってみようかなと思っていたのだった。というわけで時間はあまりなかったのだけど見に行ってみました。

設定は近未来?スクラップにされるはずのロボットが6体、工場から逃げ出した。予備電池のない彼らは、バッテリーが切れるまでの束の間、ロボットの自分が「自分のやりたいこと」をして過ごそうと決める。その中の一体であるロイは逃亡の途中であるひとりの女の子と出会う。ロイは残りの時間を、生き生きと自分を生きている彼女とともに過ごそうと決意するが・・・。

キャラメルで加藤さんが紹介したということもあってやはり系統的には似ていました。しかし作品の展開がキャラメルよりはシニカルな感じかな。最後にフィリップがキーになるというのはうっすら感じていましたがおお、そう持ってきますかと。ある意味、かなり救いのない展開。だからこそラストは、フィリップの思惑をも越えるものであった方が良いのではないのかなと思った。彼がプログラムを書き換えただけでは、結局お釈迦様の手の中、みたいな印象になってしまうし。伏線の散りばめ方、回収の仕方ももっと練ればより良いのにと思うところが結構あった。どうして手のひらでロボットだとわかるのかとか、どうして6体なのかとか、ロイが戦闘用だということも、もっとうまく使えたのではとか。

ひとつひとつのエピソードはとても練られていて良いシーンになっているところが多い。執事用ロボットの最期はかなり切なかったし、ファーストシーンの子供との出会いがラストへ結びついていくところ、ロイとフィリップのエピソードはかなり良くできてる。セシィとモーリス、ロイの関係もある意味「出来過ぎ」なんだけど、その出来過ぎ感を逆手にとった展開はうまいなーと思いました。ただそのエピソードひとつひとつが有機的に繋がっていない感じがするところはちょっと残念かなと。

しかし久しぶりに、勢いがうまさを凌駕している舞台を見たような気持ちになって、なんだか懐かしく思ったりも。音響は既存の曲を使っているのだろうけど、かなり良いセンスだと思う。照明もかなり「勢い!」という感じだけど、ちょっと似た処理が多くて気になった。オープニングが非常にキレイだったので、あの印象は大事にして欲しいような気もしたり。

役者の中で飛び抜けてうまい人が居てうーん誰だこれはと思っていたら客演の世界一団のひとであった。小松利昌さんというらしい。オカマ役ということで得している部分もあるけれど、それを差し引いても抜群のうまさだったと思う。というか私の好きなタイプの役者だ。関係ないが声が(顔も)生瀬勝久さんに激似であった。主役の男の子はナイーブな感じの似合う男前。フィリップをやった原さんというかたもなかなか声が良く印象的でした。

大きな会場でやるというのもキャパ拡大には有効だと思いますが、なんとなく作風的にもう少し小さい劇場でみっちり見てみたい劇団だなあと思いました。役者さんの熱気を間近で感じられる方が劇世界に酔いやすいような気がします。