「お父さんの恋」 パルコ+サードステージ

  • シアタードラマシティ 20列36番
  • 脚本 中谷まゆみ  演出 板垣恭一

中谷&板垣タッグ第4弾。showcaseの看板は取れてはいるけれど、個人的にはshowcaseシリーズを見に来たテンションではあり。
このお二人のコンビを高く評価しているからこそ期待値も当然跳ね上がってしまうわけで、だからこそかもしれないけど、個人的に今作にはちょっと乗り切れなかったな、との思いが強い。脚本としてうまくまとまっていない印象を受けてしまった。姉弟三人の個人的な問題、親の介護という問題、寝たきりの父と結婚する、といい出す若い介護士の存在という問題、それらがどうにも結びついていっていない印象。親に残されたリミットとその子供たちという切り取り方では、飯島早苗女史の「蠅取り紙」に一歩も二歩も出来を譲る仕上がりだよなあと独りごち。

「親」が他人事というひとは基本的にいないわけで、だからこそ台詞の端々に見え隠れする単語にドキッとさせられるのだが、姉弟3人(客席にも)に対してある種「父の代弁者」となっているさおりにシンパシーを感じられない(劇作的になのか、演者の問題なのかはわからない)。単に「現実をつきつける役」に留まってしまっているのが惜しい気がする。

うまく効いたなと思ったのは赤いハンドバッグのエピソードぐらいで、米櫃の小説もちょっと不発かな。大樹がさおりを見知っていたというエピは果たして必要なのだろうか。

と、なんだか辛いことを思わず書いてしまったけど、勿論面白くないわけではないのです。ある程度のレベルは超えているし、2時間半超でもきちんと集中して見れるというのは当たり前のようでなかなか難しいこと。ではあるのですが・・・うーん。やっぱりどうにも、期待値が異様に高いことが要因ですかね。

役者の中では、池田成志さんと堺雅人さん、七瀬なつみさんはなんというかこの世界を「理解している」という感じがひしひしと伝わってきてよかった。特にGJ!なのは成志さんかな。ほとんどコメディリリーフのような登場の仕方でありながら、個人的に彼の台詞に一番胸つかまれるものがあった。菊池さん、悪くはないけどなんとなく奥行きのない役作りに見えて残念。星野さん、難しい役所だとは思うけどもう少し役柄に芯が欲しいところ。前田吟さんは制約の大きい役だったけど、表情など細かい表現にも手を抜いていなくて好感でした。