「砂の上の植物群」 KERA・MAP#003

その世界の外では大層なことが起こっているのに、世界の内側は相変わらず乱雑で混乱していて自分勝手な感情が渦巻いている、世界のひどさと自分たちのひどさは実はあんまり関係がない・・・というような、ケラさん独特の世界観。

飛行機事故で奇跡的に助かったものの、墜落した島は戦火の真っ只中。日本からはなぜか救助にも来ない、現地に住んでいるというジャーナリストに住む所や食料をあてがわれるだけが外の世界との接触口という閉塞感。少しずつ、あるいは一気に常軌を逸していくのが、観ていてじりじりと足元に火をつけられている感じでなんともいえない居心地悪さ。

こういう話前も見たなあというそれこそデジャ・ヴュ感もありつつ、とはいえ3時間15分という長丁場、特に1幕の1時間50分を集中しきって見ることができたのは、それぞれのキャラクターの立たせ方が秀逸だからなのかなと思ったり。中でも赤堀さんの「道男くん」、秀逸すぎて本気で憎らしくなったほど。いやーすごい。快演でした。前半を引っ張ってくれたのは間違いなくこの人だと思う。

話の中身が微妙にタイムリーで、あまりリアルに現実世界と引き合わせるのはやめようと思いつつも、とある場面ではやっぱりちょっと引いてしまった。だってこれ、そんな未来の話でも過去の話でもないんだもんなあ。今だよ、今じゃん、これ、みたいな。希望を託すはずの未来もあるんだかないんだかわかんないんだもんな。

個人的には筒井君のキャラクターが、終盤もっと出てくるかと思ってたんだけど、期待したほどではなくそれがちょっと残念。でも朴訥オタクキャラの雰囲気はすごくよかった。前半の赤堀さんに続いて、後半を引っ張ってくれたいっけいさんもさすが。こーゆう役うまいですよねえ。猫背椿さんと池谷のぶえさんの二人、よかったなあ。特に池谷さんの正体不明な感じ、癖になりそうです。常盤貴子さん初舞台だそうだけど、そうは思えない安定っぷり。細かいことだけど最後のシーンは本気で殴ってほしいなとちょっと思いました。カーテンコールの笑顔がまぶしかったです。