「アイスクリームマン」 M&Oplaysプロデュース

岩松さんの作品、今まで2,3本しか拝見していないと思うんだけど、なんだかどうにも苦手意識があって、だからこの3本連続上演シリーズも全然チェックしていなかったのですが、高橋一生くんがねえ、どうしても見たくて。「ハルシオン・デイズ」で拝見して以来、要チェック物件(物件言うな)のお一人なので、完全に役者目当てで見に行ったわけでございます。

うーでもねえ、そんな苦手意識を吹き飛ばしてくれるほど面白かったの!私みたいに「岩松作品ちょっと苦手だなー」と思っている人ほどお勧めしたい!当日券も出るだろうし、今見たら、平日の回ならe+でまだチケット買えますよ!スズナリで29日までっす!

そんな強力プッシュしておきながらなんなんですけど、この作品を「わかる」「わからない」、「理解している」「理解していない」でいったらたぶん私は「わかってないし理解してない」になるんだろうけど(ダメダメですやん)、でもとにかく、何かわかんないけど、すごいもの見た!って感覚だけはしっかりと自分の中にあるんですよ。

ある山奥で合宿免許に参加している20人の男女が登場人物。合宿免許っていう一種独特な、ゆっるーい団体生活の、これまたゆっるーい、でも確かに存在する閉塞感の中で、爆発寸前な彼らのパワーが火花を起こし、スパークし、鎮火していく。その一瞬一瞬の火花の切実さだけはどうにもリアルで、だからストーリーがどうとか、テーマがどうとかそういうことに頭が回らないんだよなあ。その彼らの息苦しさだけが、ひしひしと伝わってきて息が詰まりそうになる。

印象に残ったシーン羅列。冒頭、吉田、君原、聡子三人の空気。風呂上り、ひとり毅然の城内。かと思えば阿部の前でなんだか躁鬱?な独り言。「いい人って言われる人はそのことに苦しんでいる。俺はい人じゃないって自分に言い聞かせてる。でもそうやって言い聞かせるがゆえにその人はいい人なのよ。」アイスクリームが一番美味いのは冬から春にかけてだって、阿部の主張。佐藤さんが夢中な家出娘ってどんな?で盛り上がる男ども。風呂上りののつぼにひとりシャツを渡そうとする早苗。場を支配する水野の登場。早苗とその姉の口論。絵を書く武。吉田と水野のガチバトル。こぼれるジンジャーエールとコーラ。

役者さんそれぞれの見事なテンション、集中力。世界をがっちり作り上げていてすごいです。荒川良々くんのファンはとにかく見に行ったほうがいいと思う。でも、良々だから笑えるんでしょ〜的見方はやめておいたほうがいいよ。だって、マジでカッコいいっすから、彼。本当に。近藤公園さんと平岩紙ちゃん、あ小路勇介くんもだ、大人計画組、いい仕事してます!遠藤雅さんて、初見だと思うんだけどいやー、たたずまいが素敵。一見親切で実は肝心なところ突き放しているクールさが良かった。城内役の佐藤直子さん、演技のテンションが皆「若者暴走」的な方向へ走るのを、ひとりまったく違うベクトルで勝負していて際立つ存在感。チョウソンハくん、多分つかさんがらみで何度も舞台を拝見しているのじゃないかと思うんですが、すいませんやっと個別認識しました。浮いたり沈んだり、激しい役どころ。愛と暴力の境目がわかんなくなっちゃうようなラスト、なぜだか涙が出てきてしまいました。小島聖さん、「男が絶対そっちを向く」と納得させるファム・ファタールぶり、最高。紙ちゃんとの、客席に背中を向けての激情芝居がすごかったです。私のお目当て、高橋一生くん。
かあああっこいいいいいい!!!!
ととりあえず一言叫ばせてください。こちらもまた「女が絶対ほっとかない」モテフェロモン出しまくりですごかった。しかも結構、やな男。たまらんなあ。

2時間ノンストップ、マジであっという間です。見終わった後下北沢のご飯屋で夕食を食べていると、そこかしこで聞こえてくる、知ったかぶった会話をしながらたいしておかしくもないのに手を打ちながら笑っている人たちの顔がなんだかぼやけて見えました。なんだ、そのぬるさみたいな。なんか自分の感覚の穴が開いたっつーか、そんな錯覚すらしてしまいそう。いやーほんと、凄かった。