「南国プールの熱い砂」 KAKUTA

初見。最近良くお名前を拝見するなと思っていたのだが、最近どころか「何気に10周年(公式ページより)」の年季の入った劇団さんなのだった。うーん、無知な自分。

小学校時代の恩師が亡くなったのをきっかけに、昔「移動教室」で訪れた南国の島に集まる小学校時代の同級生たち。いじめっ子、いじめられッ子、リーダー格の子、影の薄いやつ、転校生。あのころの思い出を語り合ううちに、昔のほのかな恋心、そして、語られなかった過去が次第に浮かび上がってきます。

奇を衒わない素直な脚本で、こちらも素直に物語を受け止めることができました。あの頃の甘酸っぱい気持ち、とは言っても、本当のところあんな風に語るべき「過去」や「恋」なんてそうそうないのが現実の人生なんですけど、それでもちょっと胸が苦しくなるような思いってのは確かにあって、そういう思いを追体験させてくれるようなお芝居でした。

たとえば修学旅行、たとえば夜の肝だめし、たとえば夏の花火大会。ほかの子に見つからないように、こっそり好きな男の子と手をつないだことのある女子は、絶対見るべき。

どんどんシリアスさを増していく後半にあって、「カッコよく成長しなかった自分」にコンプレックスを感じるあまり替え玉作戦に出た彼のエピソードが実にうまく空気を和ませてくれて大好きでした。物語のクライマックス、円形劇場の上と舞台上で物語が同時進行する場面がありますが、ここ、せっかく「舞台ならでは」の演出なので上と下がもう少し会話の中でリンクしていくと面白かったかな、と思いました。一瞬交錯してまた離れていく、みたいなのも面白いし。ちょっとどちらに集中すべきか迷ってしまったんだよねえ。

ツユをやった桑原さんと、タルをやった佐藤滋さんのお二人、すごく印象に残りました。佐藤さん、なんか若かりし頃の久松信美さんを彷彿とさせる味わいがあって素敵でしたー。ほんと、いかにも「まっすぐですてきな男の子」という感じで良かったです。冬馬くんをやった横山真二さんも好きなキャラです(笑)

大人になったっつっても、実はあんまり変わってなくて、でもやっぱり昔のまんまじゃなくて。きらきらの切なさに、後半は思わず涙。見に行ってよかったです。