七月大歌舞伎千秋楽

  • 松竹座 1階左列8番

千秋楽、行って参りました!今回1階の左側から見たので、なんだか視界が変わって新鮮でした。

東京千秋楽のような特別演出はなく、基本に忠実に、ではありつつも、五月の歌舞伎座と中日ごろに拝見した「研辰」と比較してやはりテンションの高さは今日が最高でした。
特に福助さんと勘三郎さん。
福助さんは13日に拝見したときは「あれーずいぶんおとなしいのね」とちょっと思ったぐらいで(あれで?と言われそうな気もするけれど)、扇雀さんのほうが目立っていたような気がしましたが、今日はもうなんだかすさまじいテンションでした。特におよし姉さんのときが凄かったです。ここにきてより笑いの取れる方向に声のトーンを変えてきたシーンまであって、その役者魂、あっぱれじゃ!という感じ。
勘三郎さんはとにかく客の呼吸をつかむのが天才的だなあと見るたび思わされるのですが、今日もまさに硬軟自在、といったところ。お部屋様に取り入るところがこまか〜い小芝居が増えていて(正座したままくるっと一回転とか、あれマジですごい)、もう何度見ても笑ってしまいます。そういえば「だんまり」のシーンで染さまと唇を近づけるシーン、本当に「ちゅっ」っとやってましたね(笑)そのあとの染さまの「うーわーーー」って顔がすっげおかしかったです。
あと、大師堂の場面で、辰次が「あなたがたはわたしを討てという、それがわからない」という場面、ここの「あなたがた」を勘三郎さんは以前よりもはっきり舞台上の群衆ではなくて、私達観客を意識させるように演じていた気がしました。それまで箸が転がっても笑っていた客が、そこで次第にしん・・・と静まり返っていったのがすごく印象的。
前回の感想では触れていませんが、4年前(でしたかね?)の時と較べて、染五郎さんの九市郎が断然良くなっているよなあと見るたび思わされます。九市郎と才次郎の兄弟が話の背骨をきちんと伝えてくれている部分が増えている感じがしました。辰次を斬ってしまったあとの兄弟二人の会話は特に秀逸。あの「やっと殺せた」という台詞の苦さがひしひしと胸に迫ってきて、泣けました。
そうそう、今日の稽古場での兄弟立ち回りは完璧でした。おふたりの「よしっ」というお顔が素敵。染さまと勘太郎くんの並び、なぜか大好きな私。しっかり兄さんとほんわか弟、という感じが何とも言えず良いです。ちなみに辰次にからかわれるネタ、才次郎は先日の地震の話も増えて「震度3で『お前大丈夫か』って電話してたじゃないか、この間の震度5の時は気絶していたくせに!」と言われておりました(笑)

私は野田版の初演、五月歌舞伎座、当月松竹座で2回と計4回、この「野田版・研辰」を拝見させていただいたのですけども、今日見ていて思ったのは、こんなに何度も見ているのに、何度見ても笑えるというのは本当に凄いことだ、ということです。結局お笑いか、なんて浅薄な、と言われるかもしれないけれど、例えばこの物語で描かれた群集心理や集団心理の無責任さ、人を殺す正当性というものはあるのかということ、そういったものを表現する、またはできる人は沢山いるでしょうが、ここまでそれを「笑い」というものと一緒に提示してくれる人、役者はそうそういないのではないでしょうか。特に、勘三郎さんを初めとするこの一座の方々のこの前向きの努力を欠かさない姿勢は、多くの役者に見習って欲しいと思うところです。正直なところ、これを今の小劇場の役者たちでやってこの面白さが出せるかというと、疑問だよなと思ってしまいます。
人を笑わせることの出来る役者は、泣かせることも感動させることもできる。人を笑わせる、というのは本当にたいへんなことです。それをまったく、なんの苦もなくやり遂げているかのように見える彼らの底力に感服つかまつりました!という感じ。


さて、千秋楽ということで、勘三郎さんと野田さんのご挨拶がありました。

勘三郎さん、こういう新しい試みをやらせてもらっています、大阪では初めてでどうなるかと思ったけれど、毎日沢山のお客様に愛されて幸せです、とご挨拶。ちなみに昼間の「沼津」でもカーテンコールあったらしいですね。いや、あの沼津はスタオベしたくなりますよ・・・。紹介したい人が居る、今日さっきロンドンから着いたばかり、明日また朝8時に帰るんですけど、と言って野田さんを舞台へ。野田さんも若干緊張気味のお声で、「こんなにいい舞台をつくってもらって、演劇人冥利につきます」と仰っていました。
そのあとで勘三郎さん、これからも僕らいろいろやっていきたいと思っています、
「雪も降らせたいし、桜も降らせたいし。」
ぎゃーーーーー!!!
と一人激しく客席で反応してしまいました。
続けて「二人でいろいろ考えています、でも皆さんが来て下さらなければ出来ないわけで、やっちゃダメ、って言われないようこれからも頑張ります」と仰ってました。
桜・・・マジで、超期待してしまうんですけど。いつかこの夢が叶うと思っていいんですか?いいんですか?わ、私待ちますからいついつまでも!!!