「レインマン」

  • シアターBRAVA! 2階H列37番
  • 脚本・演出 鈴木勝秀

映画は見てます。でも、その時こんなに泣いたかっつーとぜんぜんそうではなくってむしろビタイチ涙なんぞ流さなかったわけですが、おそろしいほど泣いてしまいました・・・やばい。私はスズカツさんのスタイリッシュな演出が好きで(本当に男を格好良く見せることに長けた人だと思う!)何とも言えない居心地の悪さを醸し出す雰囲気も好きで、でもこんなに私の泣きツボをぐいぐい押して下さるとは予想外だった。してやられたよー!

自らのオリジナルの作でも「脚本」ではなく「構成」とクレジットしていた*1鈴木勝秀氏の面目躍如と言うか、いやほんとカットマスター・鈴木勝秀の真骨頂ですよね・・・>kaiさん でも「レインマン」という物語の芯をきっちり捉えているから、どれだけ大胆な翻案をしても大丈夫というか、むしろ舞台の「レインマン」だからこそ伝えられるものをきっちり観客に手渡してくれていたと思う。ビュイックではなくバスで移動し、その日その日の安宿(モーテルっぽい雰囲気だよね、セットがあるわけではないけどそう感じた)での風景を切り取って見せるというアイデア、巧みに描かれていく二人の距離感。抑えの効いた演出と効果。いやもうこの舞台版を見て世界中でまたこの脚本の上演権を争うといいのよ!とか思う。これは世界に売れるホンだよ!

私はもう二幕はほとんど泣き通しっつーか、レインマンの正体がわかるところでのヅメさんの演技にほとほとしてやられ、そこからはもうだーだー泣き通しですよ。また最後のね・・・別れが切ないの。映画見たけど、ああいう台詞だったっけ?もう覚えてない。

レインマンはチャーリー・バビットを一生忘れない。自慢していいか。」
「・・・ああ。」
「・・・じゃ、自慢する。」

あかん。書いてるだけで泣けてきた(涙)
このシーンでチャーリーは泣いているのね。舞台の上で泣くって、実際に役者が涙を流しているかどうかとはまったく関係がなくて(だってそんなの一部の客にしかわからないじゃない)、でも2階席の遠く離れた席で見ていても「今チャーリーは泣いている」ってわかるのが演技というものだと思うし、芝居というものだと思う。それがライブだからこその芝居の強みだと思う。芝居はある意味大いなる嘘だけど、でもそこで共有する一瞬の感情っていうのは本物なんだよ。あのシーンで観客全体がチャーリーの哀しみを共有しているのがすごく伝わってきた。これは本当に優れた芝居にしか現れないことで、だからこそあのシーンを思い返すたび、今でも涙が出てきそうになる。

それにしても橋爪さんのレイモンドはすごかった・・・。すごすぎた。観客に一瞬で感情を伝えきり、それに巻き込む術というのか、もう本当に言葉がないっすよ。あたしはもう「バイバイ、レインマン」のところから泣き通しですよ!一幕の、普通に佇んでいるだけでももうレイモンドになっているというか、レイモンドにしか見えない!という感じだった。そしてさらにすごいのは感情を自然に表に出さない(出せない)キャラクターなのにレイモンドの心の動きがちゃんと伝わってくるところだよね・・・。マジで圧倒された。椎名桔平さんのチャーリー、不思議なことに前半での「キャラを立てる台詞」が多いところよりも、レイモンドとのやりとりでのほうがチャーリーという人が伝わってきたのが面白いところだなと思った。レイモンドとチャーリーの関係性を基本に役を作っていったのかなと。あの橋爪さんの凄すぎる演技をきっちり受けて返しているのは、そういう部分が根幹にあるのかなあと思ったり。いや実際並大抵のことではないと思うよ!朴さんも大森さんも存在感を示してくれていて、出番は多くないのに埋もれた感はまったくないのがいいです。いや本当にいい座組だった!

本当にまたこのキャストで純粋再演してほしい、というかこれはメディア化はしないの!?放送とか・・・MGMが権利持ってるから難しいのかな。わーん本当に再演してほしい。スズカツさんもブログで書いていたけど大阪公演千秋楽も超満でした。BRAVA!の2階席の最後列までいっぱいだったよーーー!嬉しい嬉しい。再演祈願しておこうっと。

*1:今回「脚本」クレジットなのは「原作」が明示されているからだと思われ