「ダム・ショー」

  • シアタートラム C列5番
  • 作 ジョー・ペンホール 演出 鈴木勝秀

一度感想を書いてはみたのだけども「部屋とワイシャツと私」ならぬ「テレビとタブロイドと私」みたいな、もう全然芝居関係ないやん!という事に無駄に熱くなってしまったのでやめました。

銀行員を装って有名コメディアンに近づき、彼のゴシップをすっぱ抜こうとする記者とコメディアンの攻防を描いている舞台。これでどっかんどっかん受けていたんだろうか、イギリスでは。すごい・・・イギリス人てタフだ・・・とてもじゃないけど笑えるほど余裕を持って見られなかったです。というのも私はタブロイドで扱われるゴシップネタが嫌いだからです。何故嫌いかということを熱く語りすぎると結局「タブロイドと私」に逆戻りなので話を戻さないといけないのだけど、ひとつこの芝居を見ていて気付いたことがあった。それはグレッグがリズにいうこの台詞に象徴されてる。

だから俺たちの責任なんだよ、な、やつを1、2段引きずりおろしてやるのがさ。

どうですか、私はもう今ここが舞台じゃなかったらグレッグを演じている鈴木浩介さんをぐーで殴りに行くのも厭わない、というぐらいむかっ腹が立ちましたよ。結局はここなんだと思うのね。例えばグレッグがね、「俺はこのネタをものにしなきゃいけない、地方でクソつまらないコラムなんか書くのは御免だ」とか「俺は人のゴシップが好きだ、人を引きずりおろすのが好きなんだ」とか言っていたらね、やってる行為は同じでも全然腹は立たない。好きなのか、そうか好きならしょうがない、と思いますよ。腹が立つのは、なんで頼んでもいないのにいきなり代弁者気取り!?っていう、なに正しいことした気になってんの?っていうところなんです、結局は。

二人の記者のうち、グレッグよりリズの方が断然タチが悪いのに、嫌悪感を感じるのはグレッグの方だというのも、そういうところに原因があるのだと思う。リズは自分のやっていることに自覚的。だからリズとバリーの攻防は、ある意味痛快ですらある。

それにしてもほんっとバカばっかが出てくる芝居だった。バリーもバカ、リズもバカ、グレッグもバカ。人間って芸が売れなくなったら自分を売りに出すんだね・・・バリーに限らないわな。私も含めてみんな、「自分を知って欲しい」欲求のオンパレードだものね、ネットなんてね。

という感想が出てくるほど、3人の役者陣はお見事でした。鈴木さん、殴りたいなんて言ってゴメン。それぐらい好演してたってことでひとつ。浅野温子さんのセクシーぶり、くらくらした・・・あの胸の谷間!どう!あれで落ちない男っている!?浅野和之さんの着ているスーツが個人的には超絶ツボでした。紫を基本にした変わったデザインで、ジャケットを脱いでベスト姿でいるシーンが結構あるんですがもう眼福!という感じ。凝ってるなー!と思ったのは、シャツが遠目には白と見せかけてうすーい紫なんだよ!きゃあきゃあきゃあ。浅野さんほっそいから超お似合い。

ホワイトノイズを多用した演出、転換時に出てくるスタジオスタッフ(の衣装を着ている)、書き割りのセット。人間の薄っぺらさのようでなんだか物悲しい。