「書く女」二兎社

永井愛さんにしては脚本が散漫になってしまったなという印象。実際の「樋口一葉伝」を知っている人ならば当時の文壇界のあんな人こんな人が話に絡んできてもバックボーンを知っているので話の中心はブレないかもしれないけども、バックボーンを知らない人間が見ると話の芯が落ち着かないままラストに向かってしまった、という印象を受けてしまう。不勉強だといわれればそれまでですが。

キャラクターとしては斎藤緑雨半井桃水のふたりが両極でキャラも立っていたので、この二人と樋口一葉にもっと絞った話で見てみたかった、という気がしました。

個人的にいちばん面白かったのは斎藤緑雨が一葉に向かってその文学の謎解きをしてみせるシーン。そこに至るまで、「一葉が文学に託したもの」がちょっと伝わりづらいので、このシーンが特に印象に残った、ってのはあるかもしれません。

あの時代に生きて、今やお札のデザインになるほどに後世にまで残る星となった「書く女:一葉」がなぜそうなりえたのか、実際の一葉伝ではなくその謎に現代の書く女である永井さんに迫ってもらいたかったな〜、などとも思ってみたり。

寺島しのぶさん、舞台で拝見するのは初めてかも。後半が特に良かった。声にいろんな幅を持たせられる女優さんだなあと。筒井くんの半井桃水もいい味。斎藤緑雨はなんとなく堺雅人にやらせてみたくなる役でしたね。