「當る亥歳 吉例顔見世興行」

  • 南座 1階16列23番

久々の歌舞伎になりました。勘三郎さんの2年がかりの襲名披露も京都南座が最後。今回は昼の部のみ。夜は勘三郎さんの道成寺歌舞伎座で見たし、仁左衛門さんの俊寛は気にはなったんだけど俊寛の話そのものがどうもニガテなので見送り。まあ、最大の要因はお切符代なわけですけどもね。しかし、口上の「松竹永山会長云々」のところはどうしているのかな、承諾を得、と言ってるだけなのでやっぱそのままか。

「猿若江戸の初櫓」歌舞伎座で3月に拝見した演目、正直なところをいうとあの時を100とすると80ぐらいの出来かな、という感じ。まあこれからちょっとずつ調子を上げていって頂きたいところです。「寿曽我対面」これは大阪松竹座で見たんだったかな。翫雀さんの十郎が優男というよりは気の弱いお兄さんという感じだった。秀太郎さんの舞鶴がよかったな。「義経千本桜 道行初音旅」藤十郎さんの静御前が普通に綺麗で驚く。芸の力ってすげえ!勘三郎さんがすっぽんから出てきた瞬間の「待ってました!」な拍手がすごかった。ひとつ飛ばして「お染久松浮塒鷗」。橋之助さんて素顔はこの久松みたいなおっとりボン、という感じなのに舞台でそれをやるとなんか違和感感じるのが不思議、なんでなのかなあ。芝翫さまの踊りを堪能できて満足。

さて、今回のメインディッシュ、「義経千本桜 川連法眼館」です。これは歌舞伎座勘三郎さん襲名の時に菊五郎さんがやったのを見たんですけど、やっぱり役者が違うとまた違う面白さがあってすごいなと思った。というか、それまで前のめりというよりはわりとのんびり見させていただいてます、ってな姿勢だった私なのに、源九郎狐が観念して正体を語りはじめるところでいきなり泣いてしまったからね・・・別に勘三郎さんが特別なにかやってるってわけでもなくて、淡々と自分と鼓の話をするだけなんだけど、端々からこぼれ出る親狐への情にあっと言う間に巻き込まれてしまったという感じ。また義経仁左衛門さまだもの、「親とも思う兄頼朝に・・・」でまたうっかりもらい泣き、勘太郎くんの静もすごくよくて、命あらざるものにこれほどまでに・・・とか言って涙するところでこっちも泣いたり、なんかもうちょっと最後恐ろしくなってきた、あまりの伝わりぶりに。なんなのこれ。勘三郎さんてやっぱすげえんだな・・・と改めて感動。

南座はというか、京都は、というか、やっぱり独特の雰囲気があっていいっすよね。お芝居見物に来た〜、という気にさせてもらえます。幕間に食べる和菓子なんかもいろいろ調達したりするのが楽しいのだ!お値段のことはあるけれども、豊かな気持ちで過ごさせてくれるところだよなあと思いました。