「藪原検校」

手練れの役者さんぞろいで、しかも古田さんがタイトルロールをやるというので大変楽しみにしておりました。うん、面白くなかったわけではないけど・・・確かに役者の技とか演出の技とか、そういうテクニカルな意味では楽しめたんですけど、作品としてどうかという点ではちょっといまいちだったかなあという感じ。

古田さんの杉の市、悪逆非道の限りを尽くしながらも愛嬌があって憎めない、そういう意味ではよかった(最後、やっぱりこのまま死んじゃうのはかわいそうって気にもなったし)。早物語も確かにすごい。だけど、杉の市というひとの魅力で舞台を立ち上がらせるところまではいってない感じだったんだよなあ。ただ、段田さんの演じる塙保己市とのシーンになると途端にうねりが出てくるんですよね。対比して描かれるふたりが出ているからだというのはもちろんなんですけど、古田さんってやっぱり良く悪くも人に合わせることに異様に長けているんだと思う。それがうまい人だと尚更その人も輝かせ、かつ自分も輝くみたいな、そういう手管では右に出る人はいないんだろうと思うんですけど。

あとはやっぱり、これは完全に私の趣味の問題ですが、音楽に入ってこられるよりも台詞でおしてもらう方が好きなんですね、これはもういかんともしがたい。とはいえ、今回のギターは素晴らしかったです。遠くてよく見えなかったけど、黒のギターってセミアコっぽくなかったですか?あの音色よかったなあ。

壤さんの語りは名調子。本当にこの舞台を支えてますよね。しかし昼公演だったからなのか、壤さんにも古田さんにも、あの段田さんにでさえ軽くミスが見られたのはやっぱりマチネの罠なのかなあ。