「何日君再来」

テレサ・テンという実在の歌姫を巡る、虚々実々のフィクション。ふたつの中国、というテーマも抱えつつ、歌、踊りでエンタテイメントにコーティングという感じ。上演時間は休憩20分を挟んで約2時間半。

幕末純情伝を飛龍伝を足して2で割ったようなストーリー。そして、ザ・つか!あれもつか!これもつか!みんなつか!というぐらい、つか節に染まった舞台でした。中途半端にセットがあるところが岡村節って気もしますけども。LED使ってたけど、あれいらないんじゃ・・・

ふたつの中国、という面から見ると物足りなさすぎるし、エンタテイメントとして見るには若干重いところもあり、という感じなんだけど、この作品が「物足りなさ」から救われているのはやはり歌の力だな、と思う。テレサ・テンというひとの歌声が、たとえその歌が恋の唄であっても、やはり圧倒的な力をもって訴えかけてくるものがあるのだ。やっぱり音というものの持つ力はすごい。

しかし、個人的にもっとも圧巻だったのは、クライマックスでリンに語りかける筧利夫演じる日向の長台詞である。いやあ・・・あれはすごいね。いやあ・・・あれはすごい(2回言った)。凄い人だって知ってたけど改めて思う。あのシーンは凄いよ。マジで日生が狭く感じた。言っているのはともすれば青臭い理想論と一蹴されるようなことなのに、筧さんが語ると信じたくなるもん!筧さんもあそこのシーンにすべてを賭けているという感じがしたなあ。完全に客席を掌握してました。ホントお見事!

ダンスのシーンも凄く多くて、こんなに踊る筧さんは第三舞台以来じゃないのか!という踊りっぷりを堪能。相変わらずのキレのよさ。あと、ほぼ出ずっぱりながら相変わらずバトンの受け渡しが完璧で、自分が持つべき時は持つ、自分じゃない役者が持っているときはちゃんと自分を殺す、そういう作業にまったくブレがない。

ヒロインの黒木メイサさんは初見ですが、あの佇まいには惚れ惚れ。かっこいい・・・・もし次にアテルイを再演するならアラハバキは君に!と思うほどのかっこよさ。*1声良し、動き良し。舞台の真ん中であんなにまっすぐ立てるひとはそうはいないですよ。en-rayさんの歌もよかった。あと、吉澤さん一瞬自分の声で歌うシーンあったよね?あそこよかったな。

最初はどうなることかと思った部分もありましたが、案に相違して楽しめたなあというところ。いやー、しかしやっぱ、筧利夫凄い。

*1:私にとっては女優さんに対する最高の褒め言葉です