「夏の夜の夢」子どものためのシェイクスピアカンパニー

昨年が「リチャード三世」だったのでことしはマイナーの波かと思っていたら超メジャーの「夏の夜の夢」。今まで何度かこの作品、見たことありますが、きっちりやると相当に長くなってしまう作品をコンパクトにまとめつつ、押さえるべきところは押さえる、みたいな構成は相変わらずうまいなあと。

すごく意外だったのはどちらかと言えば「惚れ薬による人間の変わり身の滑稽さ」を強く押し出してくる演出が多い恋人たちのシーンを、相当シリアスに作り込んでいたこと。ヘレナの陰々滅々っぷりたるやすごい。そのヘレナを森で見かけて後ろからそっとささやきかけるオーベロンのシーンが、だからなのかものすごいエロく見えてドキドキした。

この前に見た「夏の夜の夢」でもそうだったんですが、この恋人たちの騒動が大団円を迎えたあとに演じられる職人たちの劇中劇、というのを面白くかつ観客の心を惹きつけてみせるように処理するのはすごく難しいですよね。ドラマチックなのはどうやっても恋の鞘当ての方だから、こっちの気持ちは完全に一息ついてしまうし。あの劇中劇ってどう見てもシェイクスピア本人が「ロミジュリ」をネタにして楽しんでいる部分が少なからずあると思うんですけどどうなんでしょうか。パロディに風刺をふんだんにもりこんでいて、楽しいシーンではあるんですけどねえ。

最後のパックの有名な台詞を割り台詞にしているところや、オープニングとエンディングの演出なんかは好きすぎてのたうち回りそうなほど好み。あと森に迷い込んだときのライターを使った演出とか。役者さんも皆お馴染みの方も初めましての方も安定した演技で楽しませてもらいました。オーベロンの福井貴一さんはやっぱめさめさカッコエエですよね。

私はそんなにシェイクスピアの良い観客ではないですけれども、でも彼の人の数多くの作品、数多くの台詞の中で、何度聞いてもその素晴らしさに涙腺を刺激されてしまうのが、この夏の夜の夢のパックの台詞。舞台というものはこういうものだよ!とこれを聞くたびに思う。

我ら役者は影法師、皆様方のお目がもし
お気に召さずばただ夢を見たと思ってお許しを。
拙い芝居ではありますが
夢に過ぎないものですが
皆様方が大目に見、お咎めなくば身の励み。

私パックは正直者
幸いにして皆様のお叱りなくば私も
励みますゆえ、皆様も見ていてやってくださいまし。
それでは、おやすみなさいまし。
皆様、お手を願います、パックがお礼を申します。

ホホホゥ!