「納涼歌舞伎第一部」

「磯異人館
懸賞脚本として選ばれ、勘三郎さん(当時は勘九郎さん)が初演して評判をとった作品であるとのこと。
弟思いの穏やかな兄、ってそれまたちょう宛書きじゃねえかよ!という役柄の勘太郎くんが期待にたがわぬはまりっぷりで、あんな勘太郎くんにこんな勘太郎くん、やーもうどうしたらいいの!(どうもしないでいいです)割れた切子のガラスを丁寧に拾うとか、そういうなんでもないシーンでいちいち萌えていたのですっかり萌え疲れです。筋書きとしてはベタなところもあるとはいえすごく楽しんで拝見できました。琉球の王女・瑠璃と勘太郎くん演じる精之介の別れのシーンなんか、七之助くん演じる瑠璃の力技ともいえる入り込みようにうっかりぼろぼろ泣かされるシマツ。そのあとの弟との別れがこれまたせつねーのなんの。勘太郎くんてああいう切なさ出させたらほんといい仕事しますよね。精之介の親友の才助を演じた猿弥さんもよかったです。

「越前一乗谷
見る前はもしかしたらちょっと苦手かもなあと思っていたんですが、すーごく面白かったです。全部義太夫で聞かせるんですけど、音もバラエティに飛んでいて飽きなかったなあ。戦闘を踊りで表現するシーンがあって、しかもちょっと群舞っぽいのが新鮮だった!織田方と朝倉方の郎党役で三津五郎さんと勘三郎さんが出ていて、二人の丁々発止の踊りを見れる贅沢さも。秀吉役で勘太郎くんが出ていたんですが、個人的には踊りが見たかったなーとも思いつつ。橋之助さんの清廉な風格のある朝倉義景もよかったし、小少将の福助さんも美しかったです。なにより、ラストの紅葉降りしきるなかに小少将が立ち、その紅葉の中から義景の姿が浮かび上がってくる(盆の使い方で、本当にそういう風に見える)シーンの美しさに感動。見ごたえありました。