「女教師は二度抱かれた」

タイトルからしてもいかにも不穏、というかんじの漂う松尾さんの新作。コクーンで、染五郎さんに大竹さんと一筋縄でいかなそうなメンバーをそろえて、ということで非常に楽しみにしていました。
微妙にネタバレ的な感想になってしまったので畳みます。

過去にも松尾さんは「業音」という、かなり身を削った作品を(作品とはすべからくそういうものであるというのは措いて、目に見える形で身を削っていたというのか)作られたことがあるわけだけれど、今回の作品も設定からするとそういうカラーはすごくあって、九州の田舎から出てきた演劇界の寵児、地元でカップルがいくところなんてボタ山か動物園だっていう台詞があったけど、これも松尾さんの故郷をはっきり暗示しているし、この人の中で「閉塞感」という言葉と自分の学生時代ははっきり繋がってるんだなあと思って見ていたんですが、それでもどこか客観的な視点というのか、そういう空気が全体的にあったのが面白いなあと思った。どこか突き放している、寄り添いすぎてない感じ。

女教師は「欲望という名の電車」のブランチがモチーフになっているということだけど、個人的にはその女教師の物語よりも、「もらいすぎた」「返済が足りない」といった六郎に気持ちを寄せてしまうところがあって、だからなのか、いちばんぐっときたのは六郎が風俗嬢の家で、「すき焼きに春菊入れないで、割り下きもち甘めで」というシーンだった。あのやるせなさ。

松尾さん独特のリアルさのある台詞は非常に快調で、でもあれって、結構癖があって難しいところもあるんじゃないかと思うんだけど、大人計画組はともかく、皆わりと難なくやってたなあ。市川さんだけちょっと気になったけど。

サダヲちゃんは歌舞伎役者の前で歌舞伎役者の役をやる、すごくハードル高い部分あったろうと思うんですけど、迷いが微塵もない吹っ切れ加減で、さすがだなと思うことしきり。あの「大江戸コール&レスポンス」のフラッシュがネットで出回ったとき、2ちゃんの伝芸版で「勘三郎に言い回し似てる」と評判だったのを思い出しました(笑)浅野さんも硬軟自在という感じでさすがの存在感。染五郎さんは、あれだけ目の前で他の役者が芝居汁ふんだんに出してたらそれに乗っかっていきたい気持ちは一山いくらで売るほどあるんじゃないだろうかと思うんですけど、常に「今の俺にはいろんなものがだるい」という空気を失わずにいたのが見事だったなとおもう。紙ちゃんと二人のシーンはとってもよかった。

あと、特筆すべきなのが今回のパンフの写真である。皆、どうかと思うほどかっこよすぎ。浅野さんと松尾さんのとことか、写真からセクシービームが漂ってくるかのようでしたよ!是非お買い求めあれ(どこの回し者だよ)。