ベニサン・ピット閉館へ

玉三郎も出演 下町の極小劇場、23年で幕

使われなくなった町工場を再生し、坂東玉三郎さん、大竹しのぶさんら有名俳優が舞台に立った下町のユニークな小劇場「ベニサン・ピット」(東京都江東区)が来年1月に閉鎖されることになった。老朽化のため、併設の七つの貸し稽古(けいこ)場とともに取り壊される予定だ。
隅田川にかかる新大橋の近くにある染色会社「紅三」が、移転して空いた工場のボイラー室を改装し、85年に開場。外観は元工場のままで殺風景だが、俳優を間近に見られる約170席の極小空間が人気を呼んだ。89年には映画監督アンジェイ・ワイダさん演出の「ナスターシャ」に玉三郎さんが主演。93年からは演劇集団「TPT」が外国人演出家による作品を上演し、大竹さん、堤真一さん、麻実れいさんらが出演した。劇作家永井愛さんの「二兎(にと)社」、演出家蜷川幸雄さんの「ニナガワ・スタジオ」も本拠を置き、しばしば公演を行うなど、現代演劇の潮流をリードする場でもあった。
紅三執行役員でもある瀬戸雅壽支配人は「昭和30年代の建物をだましだまし使ってきたが、地震や台風時の被害を思うと限界でした」と話す。83年開設の稽古場は広さと割安な料金、交通の利便性で人気があり、「演劇界の社交場」としても知られる。これらの運営で、紅三は92年度のメセナ賞を受けた。

私は先日の阿佐スパ「失われた時間の流れを」が初ベニサンで、だからこの場に何度も足を運んだ人の思い入れに及ぶべくもないが、しかし「ベニサン」の名前はずっと昔からあこがれだった。
跡地がどのように再利用されるかわからないけれど、芝居に関係のある施設になってくれればいいな、と思う。